25年度は24年度に引き続き、相分離の界面モデルの一つである∇φモデルの時間発展を考え、持続確率の評価に関する研究を行った。 持続確率(persistence probability)とは1次元の確率過程が時刻Tまで一定のレベルを超えないという事象の実現確率のことでTを無限大に極限を取った場合の漸近挙動が問題となる。これは生存確率もしくは片側脱出問題などとも呼ばれ確率論における古典的な問題のひとつであり、たとえば1次元ブラウン運動や対称ランダムウォークではTの-1/2乗のオーダーで減衰することがよく知られている。そこで相分離界面における対応する問題として∇φモデルでポテンシャルが2次関数の場合の格子上の時間発展モデルにおいて、原点に着目した場合に現れるGauss過程に対する持続確率の評価を考えた。25年度は24年度に得られた部分的な評価の改良を目指した。1次元および5次元以上では持続確率の正確な漸近挙動を得ることができたが2,3,4次元では上からの評価と下からの評価を一致させることができなかった。しかしながらこれらは次元に応じて持続確率の漸近挙動が大きく変化するという興味深い結果であり、最終的に得られた結果をまとめたものを専門誌(Advances in Applied Probability)に投稿し、掲載受理となった。
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