研究課題/領域番号 |
23740089
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
安田 和弘 法政大学, 理工学部, 助教 (80509638)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | Malliavin解析 / フィルタリング / Greeks / 統計解析 |
研究概要 |
1 定常α-mixing過程から離散時間(一定間隔)にデータを観測し、未知の推移密度関数に対してカーネル型密度推定法を用いて近似するという設定の下でのフィルタリングを用いた推定に関する推定誤差解析は、データ数に対して1/2乗のオーダーで理論的な推定値に収束する(強一致性)ことを示した。実際にデータから標本推定値を得るためのシミュレーションを行うにはいくつかの近似が必要である。上記の設定はその近似の多くを含む設定になっており、真の理論値に収束するための厳密な数学的条件を具体的に与えるという意味で価値のあるものと思われる。2 記憶を持つ過程の期待値に関する感度解析に対するいくつかの数値実験を行った。その際にMalliavin解析を用いて感度解析の式を導出した。いくつかの数値実験から、記憶を持たない場合と同様にMalliavin解析を用いた手法が不連続なペイオフ関数に対して有効であるという結果が得られた。このような感度解析は数理ファイナンスにおけるGreeks計算と呼ばれ、実務的にも重要なリスク量の計算となる。3 金融危機の際のデータを中心に、日本の株式市場における跳びの存在に対する仮説検定を行った。ここでは跳びが存在する時点を特定することが可能なLee-Myklandの方法とLee-Hannigの方法を用いた。また、跳びのサイズや頻度の分布に対してカーネル型密度推定法を用いて推定した。この結果から正にも負にも跳びが存在することが確認された。金融危機のあった2008年度は負の跳びが多く存在し、分布が負の側に歪んでいることが確かめられた。一方、跳びの頻度に関しては金融危機がある程度収束した2009年度と有意差は無いという結果を得られた。但し、これらは統計量による部分もあることを注意しておく。本研究は日本の株式市場の特徴、特に跳びの構造を捉える上で重要なものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究成果として、「研究実績の概要」に記した通りの結果が得られた。それらは、申請時に計画した平成23年度の計画であり、順当に進めることが出来ているため。
|
今後の研究の推進方策 |
1 フィルタリングに関する数値解析の研究は、収束するための近似パラメータのサイズとデータ数の関係を具体的に与える。2 記憶を持つ過程に対する感度解析の研究は、より一般の金融商品の感度解析に対する公式を導き、更にシミュレーションを行い、本手法の有効性を確かめる。3 実データを用いた金融市場の解析に関する研究は、金融危機時のデータを中心にリスク中立確率の分布を推定し、日本の株式市場の特徴を調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究発表を行うため及び共同研究者を訪ねるための旅費が主たる支出になる予定である。また、その他の支出として論文掲載のための出版料や学会に参加するための参加費、数値実験を行うための計算速度の速いPCを購入するための購入費、近隣での研究会に参加するための交通費などを支出する予定である。更に、データ解析や数値実験を大学院生に依頼する時の謝金も必要となる。
|