研究課題
1 フィルタリングを用いた推定量に対して、実際にシミュレーションを行える形に近似した近似式が真値に収束することを前年度に一般論として数学的証明を与えた。本年度は具体例を与えた。パラメータの入り方が異なる2つのオレンシュタイン・ウーレンベック過程が一般論のカテゴリーの中に入ることを示した。また、非自明な解を持つ確率微分方程式に対しても、係数に対して条件を与えたため、より実用的な条件を与えることに成功した。また、実際にシミュレーションを行う際には、近似パラメータの選び方が重要になってくる。これらのパラメータは経験的に選ばれることが多いが、それらの真値に収束するための理論的関係性を与えた。2 記憶を持つ資産過程からなる金融商品に対する感度解析(グリークス)のマリアヴァン解析を用いた表現を与えた。特に経路依存型の1つであるアジア型のオプションと複数資産からなるオプションに対する表現を与えた。また、同時にマリアヴァン解析を用いた表現が数値実験的にも効率的であることを実際にいくつかの状況でシミュレーションをすることで確かめられた。記憶を持たないマルコフ過程に対して理論が組み立てられることが多いが、実際の市場のデータを調べると記憶性を持つことが知られていて、株価過程のモデルの一般化が重要となっている。この意味で、株価過程の記憶性の部分で一般化し、有効な表現を与えることは意義のあることと思われる。3 Jarrow-Kchia-Protterの方法、特に局所ボラティリティをべき型の関数とし、そのべき乗をパラメータとしてデータから推定する方法を用いて、日本の株式市場における資産バブルの存在についての実験を行った。実験により、資産バブルとして特定できるものもあったが、近似パラメータの選び方により推定結果が大きく異なることが分かった。従って、今後は別の方法を用いて資産バブルを調べる必要がある。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」に記した通りの結果が得られた。それらは、申請時に計画した平成24年度の計画であり、順当に進めることが出来ているため。
1の研究は、コンピュータ上で実際にデータを作成し、本研究での方法を用いた推定の精度がどの程度であるかを試す。2の研究は記憶を持つ株価過程に対するファイナンスに対する数値実験を行う。3の研究は昨年度行った方法とは異なる方法を用いて、資産バブルの存在について考察する。
研究発表を行うため及び共同研究者を訪ねるための旅費が主たる支出になる予定である。また、その他の支出として論文掲載のための出版料や学会に参加するための参加費、実証実験を行うためのデータ購入料、近隣での研究会に参加するための交通費などを支出する予定である。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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