研究概要 |
本年度の成果の一つは,時間2次精度の特性曲線有限差分スキームを提案し,離散L2理論を構築したことです.特性曲線有限要素法では合成関数が現れるが,その合成関数は各三角形要素上において滑らかではないために,その積分を計算機上で厳密に再現することは困難です.これにより,実計算での数値積分に注意が必要であることが報告されています. 開発したスキームは有限差分法を用いるため,積分は不要です.よって,理論と実計算が完全に一致します.特性曲線法に基づくスキームの利点,すなわち連立一次方程式の係数行列の対称性,を維持しているため,その求解は高速です.また,時間2次精度の実現には,Rui-Tabata[2002, Numerische Mathematik] の結果を参考にして,通常のCrank-Nicolson法を時空間移動する特性曲線に沿ったものに拡張しています.解析には離散的なL2理論を用いており,最大値原理が成り立たない問題を意識したものとなっています.同理論を展開してスキームの安定性・収束性を示して,数学的に正当化しました.既に開発した安定化特性曲線有限要素法,野津-田端[2008, 日本応用数理学会論文誌], Notsu[2008, Trans. JSCES], は3次元問題を意識した,流速・圧力ともに四面体1次要素を用いたスキームです.同スキームを基礎として,熱対流問題の計算スキームを開発しました.開発したスキームは流速・圧力・温度全てに四面体1次要素を利用したスキームであり,3次元問題に有用です.同問題に現れる2つの物質微分項を,ともに特性曲線法を用いて離散化することにより,スキームは対称となっており,かつ計算負荷は半減しています.実際に2,3次元問題の数値計算を行い,有用性を確認しました.
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