研究課題/領域番号 |
23740091
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
長井 秀友 東海大学, 理学部, 講師 (00572140)
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キーワード | 超離散系 / 可積分系 / ソリトン / 箱玉系 |
研究概要 |
当該年度は報告書を2本、国際会議における発表を1件、国内発表を1件行った。当該年度に得られた研究結果は24年度から始められたB型箱玉系に関するものであり、以下にその研究意義と研究結果を述べる。 離散系におけるソリトン方程式はA型、B型、D型などの分類がなされている。本研究のゴールの一つとして、このような解の分類を超離散系でも構築することが挙げられる。A型に分類されているソリトン解の超離散化は多くなされているが、B型、D型はほとんど知られていない。当該年度は24年度から始められたB型箱玉系と呼ばれる超離散方程式を対象に引き続き研究を行った。このB型箱玉系はB型、D型の離散系のソリトン方程式を含む広いタイプの離散方程式を超離散化して導かれた超離散方程式である。このような広いクラスの方程式を調べる理由には、24年度までに行った超離散PPS方程式に関する研究によって、超離散系では元の離散系の解の分類が必ずしも対応しないことを示唆する結果が選られれていることによる。つまり、超離散系では新しい解の分類が必要であることが予想される。その中でB型箱玉系はA型に起因する超離散KdV方程式の解と超離散戸田タイプの解の二つを含むことが確認されているため、解の分類を調べるという点では良い対象であると考えられたためである。 24年度までの研究でB型箱玉系の解を数値実験上で観察し、ソリトンの挙動を持つことを確認した。これに対して当該年度はこれらの挙動を与える厳密解のいくつかを得ることに成功した。得られた厳密解は上記に挙げた2種類の解を特別な場合に含む。その意味で、得られた解は超離散系での広いクラスの解を導いたことを表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究のゴールの一つとして、超離散ソリトン系の分類が挙げられる。連続や離散のソリトン系ではリー代数等を用いて方程式や解の分類がなされている。しかしながら当該年度までの研究により、離散系で知られている解の分類が超離散極限の過程で分類が混同されてしまうことを示唆する結果がいくつか確認されている。このこと自体は超離散ソリトン系の数理構造を特徴づける一つの研究結果として見ることができるが、一方で構造を明確にするという観点からは、従来のアプローチとは異なる方法が要求される可能性がでてきたため、達成するにはさらなる状況的証拠等が必要になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きB型箱玉系を対象にして研究を行う。これはA型である超離散KdV方程式を含んでおり、かなり近い分類として期待されるからである。当該年度において2ソリトン解に相当する厳密解が得られたため、多ソリトン解の導出や、離散系との対応を与えることを第一の目標とする。次にこれらの解、離散対応をもとに解のパフィアン表示等を試み一般化への昇華を試みる。また今年度は国際会議での発表なども決定されており、研究費は主に旅費や論文の印刷代等に使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は日程等の関係から海外での国際会議発表を行うことができなかった。一方で、発表用のパソコンを経年劣化のため買い換えた。これらの差引額から次年度の使用額が生じた。 当該年度はすでに国際会議等の発表が決定しているため、これらの旅費や研究に関連する図書等の購入に使用する予定である。
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