研究課題/領域番号 |
23740093
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
井手 勇介 神奈川大学, 工学部, 助手 (70553999)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 量子ウォーク / 有限グラフ / パス / 複雑ネットワーク |
研究概要 |
ランダムでないグラフ上の量子過程の研究として,パス(有限個に頂点を制限した一次元格子)上の離散時間量子ウォークの解析を今野紀雄氏(横浜国立大学)・瀬川悦生氏(東京大学)と行い,一次元円環に1本の弦を追加したグラフ上の連続時間量子ウォークの解析をXin-Ping Xu 氏(蘇州大学:中国)・今野紀雄氏(横浜国立大学)と行った.両者共に,時間発展作用素の固有空間解析において第二種チェビシェフ多項式と呼ばれる直交多項式が重要な役割を果たしている.前者のパス上の離散時間量子ウォークの解析では,出発点への再帰確率が頂点数を無限大にする極限で正の値に留まる現象(出発点への局在化)が証明された.これは,通常の一次元格子(無限系)では見られない現象である.この結果に関して,2011年11月7日~10日にスペイン・バレンシアにて行われた国際会議にて発表し,この成果をまとめた論文を学術誌に投稿中である.後者の一次元円環に1本の弦を追加したグラフ上の連続時間量子ウォークの解析では,これまで行われていなかった当該グラフのラプラシアンの固有空間解析を行った.その結果,一次元円環と当該グラフとでは最大固有値が本質的に異なっており,その違いにより一次元円環では見られなかった出発点への局在化が当該グラフで見られることを示した.また,当該グラフは複雑ネットワークで扱われる(変形)Watts-Strogatzモデルの特別な場合にも対応しており,シミュレーションにより示唆された現象の一部を解析的に示したことにもなる.この成果をまとめた論文はPhysical Review A誌に採録された.両者とも,有限グラフ特有の現象を解析的に示した結果であり,ランダムなグラフを含めた有限系での解析の今後の展開が期待される.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ランダムでないグラフの上の量子ウォークの時間発展作用素の解析に予想以上に時間が掛かり,ランダムなグラフ上の確率・量子過程の解析にそれほど取組めていない.
|
今後の研究の推進方策 |
ランダムでないグラフ上の量子ウォークの解析を引き続き進めるとともに,その他の確率・量子過程に関する検討も進める.また,ランダムなグラフの隣接行列・ラプラシアンの解析に取り組みたい.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度はセミナーの時間調整等がうまくいかず,研究者招聘等が予定通りに進まなかった.その分と次年度請求分の経費の一部を,8月に京大数理研で予定している研究会の講演者招聘等に充てる予定である.また,本年度同様,書籍購入費・出張費に残りの研究費を充てる予定である.
|