研究課題/領域番号 |
23740093
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
井手 勇介 神奈川大学, 工学部, 助教 (70553999)
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キーワード | 量子ウォーク / 有限グラフ / パス / 複雑ネットワーク / センサネットワーク |
研究概要 |
ランダムでないグラフ上の量子過程の研究として行った,パス(有限個に頂点を制限した一次元格子)上の離散時間量子ウォークの解析に関する論文がQuantum Information Processing誌に採録された.この研究成果をさらに拡張すべく,研究を引き続き行っている.また,関連する研究として,glued tree(根つき有限d-分木の葉をランダムにつなぎ合わせたグラフ)上の離散時間量子ウォークの解析を,今野紀雄氏(横浜国立大学)・瀬川悦生氏(東北大学)・Xin-Ping Xu 氏(蘇州大学:中国)と行っており,現在その成果を論文にまとめている.両者共に,時間発展作用素の固有空間解析において第二種チェビシェフ多項式と呼ばれる直交多項式が重要な役割を果たしており,出発点への再帰確率が頂点数を無限大にする極限で正の値に留まる現象(出発点への局在化)が証明された.前者の結果に関して,2012年11月24日から26日に岡崎にて開催された国際会議でポスター発表し,2013年1月10日に米国・サンディエゴにて行われた米国数学会のスペシャルセッションにて口頭発表(招待講演)した.なお,このスペシャルセッションにはco-organizerとしても参加した.ランダムなグラフに関係する解析として,林幸雄氏(北陸先端大)らと,ランダムな長方形分割によって生成される長方形の面積分布に関する研究を行い,その成果をまとめた論文がPhysica A誌に採録された.この結果の応用例として,人口分布等を考慮した通信経路の設計問題などがあり,工学的応用も期待される.また,論文準備中であるが,ランダムなグラフの工学的応用として,センサネットワークの通信経路設計プロトコルの研究も現在行っているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ランダムでないグラフの上の量子ウォークの時間発展作用素の解析に時間が掛かっているが,ランダムなグラフに関する理論的・数値的知見も積み上がりつつある.
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今後の研究の推進方策 |
ランダムでないグラフ上の量子ウォークの解析を引き続き進めるとともに,その他の確率・量子過程に関する検討も進める.また,ランダムなグラフの工学的応用も視野に入れた研究を行っていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は効率的に研究費を執行したため,次年度使用額128,308円を繰り越すこととなった.次年度も本年度同様効率的な執行を心がけながら,研究に必要な知見を得るために,セミナーや研究会において専門的知識を教授して頂きたいと考えている.そのための,旅費や謝金に研究費の一部を充てる.また,書籍購入費や自身の出張費にも研究費を充てる予定である.
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