研究課題/領域番号 |
23740097
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
三浦 毅 山形大学, 理工学研究科, 教授 (90333989)
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キーワード | スペクトル保存写像 / 摂動の安定性 / 等距離写像 |
研究概要 |
関数解析学における古典的問題として等距離写像の構造の決定がある.ノルム空間の間の全射等距離写像は実線形であることを主張するMazur-Ulamの定理を拡張し,特にコンパクトHausdorff空間上の正値連続関数全体の間のある種の全射等距離写像は同相写像を用いて荷重合成作用素として表現されることを示した.また単位元をもつとは限らない関数環の間の全射等距離写像はChoquet境界の間の同相写像を誘導し,それを用いて荷重合成作用として表されることは既に解明していたが,その同相写像をShilov境界まで拡張することが出来て,全射等距離写像はShilov境界の間の同相写像を用いた荷重合成作用素となることを証明した. 数直線上で定義されたBanach空間値連続写像に対してVolterra型積分作用素を考えるとき摂動の安定性が問題となるが,Jungは不動点定理を用いて摂動の安定性の非常に特別な場合を考察した.その結果を一般化しVolterra型積分作用素の摂動が安定的であるための十分条件を与えるとともに,安定性に関する定数を与えた.またある場合には摂動が安定的となるための十分条件が必要条件であることも示した.またBanach空間に値をとるChebyshevの微分方程式に対してその安定性を証明するとともに,Banach空間における定数係数の1階線形連立微分方程式が安定的であるための必要十分条件は,その係数行列のすべての固有値が純虚数でないことを示した.この結果の系としてBanach空間における定数係数n階線形微分方程式が安定的であるための必要十分条件は,固有方程式のすべての解が純虚数でないことを証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単位元をもつとは限らない関数環に対しては全射等距離写像の構造が解明されたが,写像の組に対するある種のスペクトル保存写像についてはある条件の下でしかその構造が決定出来ていない.また摂動の安定性に関してはTonevの先行研究が発表されているので,その結果を詳細に検討し,さらなる発展を目指す必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
関数環上の全射等距離写像の構造を調べることにより,積の構造が等距離写像に与える影響は想像以上であることを認識した.したがって積の構造を考えずに,線形空間上の全射等距離写像の構造を決定する問題は非常に重要である.この研究については,ある条件の下では等距離写像の構造が解明出来ることが分かっているが,一般の場合にはその様子が知られていないようである.たとえば単位円周上の1次関数全体からなる線形空間上の等距離写像を調べ,数学的対象に対する事実を積み重ねることにより抽象的理論を構築しなければならない.
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究成果を発表するために,多くの研究集会に出席し情報交換を積極的に行いたい.その一方で研究の発展は他の分野との融合によってなされることも少なくないので,関連分野に限定することなく他分野の研究活動や文献にも触れながら自分自身の研究を進めていきたい.
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