本研究は、天体や銀河などを連続体近似を用いてモデル化し、そのモデルを数学的に解析することで天文現象を解き明かすことを目的とする。モデルとして、自由表面を持ち自己重力の効いている粘性熱伝導性ガス(流体星)を考え、その運動を初期境界値問題(自由境界問題)として定式化し、数学解析を行う。平成25年度の主な研究成果は以下の通りである。 (1)ガスが理想気体の場合の球対称運動(中心球核の外側の運動)を考察し、解の長時間挙動を調べた。前年度までの研究により、1次元運動のときとほぼ同等の結果(解の一様有界性、並びに定常解への時間収束)が得られていたが、この結果を導くには流体星の周囲の環境に関するある条件(仮定)が必要となっていた。この条件の緩和および精密化に取り組んだ。結果として、条件の部分的な精密化は進めることができたが、決定的な意味で条件を改良するまでには至らなかった。しかしながら、この取組を通して問題の本質をよりはっきりと掴むことができたと考えている。この研究の成果については、国際ワークショップを含むいくつかの研究集会で発表し、発表論文を載せた報告集も出版された。 (2)(1)と同じく理想気体の球対称運動を仮定し、自由表面と中心核の表面での熱の出入りのあるモデルを考察した。対応する定常問題の考察は前年度までに概ね済んでいたが、それをさらに精密なものとし、続いて時間大域解の一意存在証明に取り組んだ。そのための解の評価として重要なものをいくつか得ることができたが、今年度の研究では決定的な成果を出すまでに至っていない。この課題は現象数理的な観点から重要と考えており、今後も鋭意取り組んでいく所存である。
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