研究課題/領域番号 |
23740101
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
伊藤 弘道 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30400790)
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キーワード | 非線形弾性体 / 粘弾性体 / 準線形楕円型方程式 / 逆問題 / き裂 |
研究概要 |
実際に起きている破壊現象の背景にある数理構造を解明するため、平成24年度には主に下記の2つの研究を行った。 1.昨年度に引き続き応力・歪み関係式がべき乗則で表される2次元非線形弾性体におけるき裂問題の面外変形(モードIII)の場合についての研究を行った。その際、支配方程式はpラプラス方程式となり、そのき裂先端における解の詳細な挙動について考察した。その結果、領域の幾何形状や境界条件が特殊な状況の場合に対しては解決の糸口が見つけられたが、一般の場合、例えばき裂上の応力に対して境界条件を課す場合などについては、未だ結果を得るまでには至っておらず、現在も鋭意研究継続中である。 2.破壊現象を別の角度から眺めるために、非破壊検査に関わる、3次元線形粘弾性体における空洞の再構成の逆問題を考察した。その結果、共同研究者である池畠優教授の囲い込み法を援用し、物体境界における時間情報を含んだ観測データから物体内に潜む未知の空洞の三種の情報(支持関数、物体外部の点からの距離、任意の点を1つ固定しその点を中心とする空洞を含むような球の最小の半径)を抽出する公式を確立した。その際、観測時間については何ら制約条件は不要であるものの、それらの情報を得るためには理論上、無限個の観測データが必要であり、今後の研究に改善の余地がある。 この研究成果は池畠氏との共著として、国際学術誌Inverse Problemsに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の大きな目標の1つは非線形弾性体に関する結果を得る事であるが、この数学解析は先行研究も少なく、非常に困難な課題である。しかし、問題点が整理されている現況であるので、研究は着実に進展しており、進行状況はおおむね順調といえる。 また、当初、本研究課題の目的にはなかったが、研究協力者である群馬大学の池畠優氏との共同研究において破壊現象の解析に関わる、線形粘弾性体における空洞の逆問題の新しい結果が得られた事は、今後研究課題を時間依存の問題に発展させていく上で有用な知見を与えるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の研究計画の通りに進めて行くが、特に非線形弾性体に関する問題の解決に重点を置く。 その研究推進方策としては、この問題に関連する国内研究者はほとんどいないため、本研究を円滑に遂行する上で、研究協力者等との継続的な研究打ち合わせや研究支援の要請を考えている。平成25年度にはこの方面のヨーロッパの専門家との交流(招へいや国際ワークショップの開催など)を計画しており、新たな研究の展開、進展が期待される。また、考えるモデルや得られた結果の意義を検証するためには、工学研究者との情報交換も重要であるので、それらとの交流も計画している。 さらに、昨年度までの研究調査により、対象とする物体は異なるが、流体方程式の中で本研究が扱う非線形弾性体の方程式と似た性質をもつものが存在する事がわかったので、流体研究者との研究討論により新しい知見を得ようと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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