実際に起きている破壊現象の背景にある数理構造を解明するため、様々な偏微分方程式のき裂先端における解の性質を深く解析することにより、実際に起きている破壊現象の背景にある数理構造を解明することを念頭に置いて、平成25年度には主に以下の研究活動を行った。 まず、当初の研究実施計画を見直し、新たな着眼点で新たな研究協力体制やそれに係る経費(主に海外研究者の支援)を再構築したため、本年度が研究実施最終年度となり、研究成果のとりまとめを行った。 また、2次元弾性体媒質にTimoshenko梁(等方・非等方)の介在物を含む状況下での境界値問題の研究を行った。この問題は材料科学や固体力学を中心とする工学における様々な場面に現れる重要な問題である。ここでの研究の特徴は、従来数学で扱われてきた境界条件とは異なり、弾性介在物の表面上に非貫通条件や剥離の条件など非線形の境界条件を課したことにある。それにより数学解析は困難となるが、物理的には適切な条件といえる。その結果、境界値問題の一意可解性や弾性介在物の物性(剛性率)を表すパラメータの極限をとることにより、解が、弾性介在物の剛性率を大きくすれば、剛性介在物の場合の解に収束し、小さくすれば亀裂の場合の解に収束するといった非常に自然な結果を厳密に証明することができた。尚、本研究成果はA.M. Khludnev(Lavrentyev Institute of Hydrodynamics)との共著論文として国際専門雑誌へ投稿した。
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