研究課題/領域番号 |
23740102
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤川 英華 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80433788)
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キーワード | 複素解析学 / 双曲幾何学 / リーマン面 / タイヒミュラー空間 / モジュライ空間 |
研究概要 |
無限型リーマン面のモジュライ空間の構造の研究は,無限次元タイヒミュラー空間上のタイヒミュラーモジュラー群の作用の力学系の考察が基本である.有限次元タイヒミュラー空間上とは異なり,無限次元タイヒミュラー空間上のタイヒミュラーモジュラー群の作用の様相は極めて複雑であり,無限次元タイヒミュラー空間上でのタイヒミュラーモジュラー変換の分類理論はまだ確立されていない.そこで,タイヒミュラーモジュラー変換を,発散型,無限離散型,非有界型に分類し,タイヒミュラー空間の点に当たる無限型リーマン面の双曲幾何学的性質が,タイヒミュラーモジュラー群の作用にどのように反映されるかを考察する.タイヒミュラーモジュラー変換が発散型であるとは,タイヒミュラーモジュラー変換による軌道がタイヒミュラー空間の無限遠に発散することであり,また無限離散型とはタイヒミュラー空間上に集積点を持たないことである.明らかに発散型であるならば,無限離散型である.今年度の研究では,あるリーマン面のタイヒミュラーモジュラー変換で,無限離散型であるが発散型ではないものを具体的に構成した.また,これまでの研究で,無限離散型であるならば,非有界型,つまり軌道が有界ではないことが分かっている.さらに,非有界型であるが無限離散型ではないタイヒミュラーモジュラー変換の存在も分かっている.これら一連の考察をあわせると,タイヒミュラーモジュラー変換の分類のための基本的考察がなされたことになる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイヒミュラー空間,および漸近的タイヒミュラー空間上のタイヒミュラーモジュラー変換による軌道の様相の考察はほぼ完了している.また問題点と今後の課題も具体的に明らかになっている.今年度の結果を含めた研究の一連の流れは,研究集会「Group actions and applications in geometry, topology and analysis」(中国),「Low-dimensional Geometry and Topology」(東京工業大学),「複素力学系の新展開」(京都大学数理解析研究所),「リーマン面・不連続群合同研究集会」(大阪大学)で発表することができ,最終年度の研究の方向性を固めた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果を精査し,論文にまとめる.その中で未解決課題へのヒントが得られることも期待できる.講演により成果を積極的に公表することで,新しい視点を議論したい.特に,6月には中国南京で行われる国際研究集会 The 21th International Conference on Finite or Infinite Dimensional Complex Analysis and Applications に出席し関連する研究者に成果を報告する.また8月にはフィンランドで行われる複素解析学分野の権威ある国際研究集会 XXII Rolf Nevanlinna Colloquium に出席し,関連する研究者と議論し意見交換をすることにより,本研究の方向を確実なものにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
現段階では研究課題解決の最終的な形が見えては来ているものの,もう少し証明や議論を精密化して,最良の結果を出したいと考えている.最終成果をまとめるためには国内外の研究者との議論が必要であったのだが,今年度は主に,研究代表者独自のアイデアを生み出すことに励んでおり,またその成果のまとめに時間がかかった.そのため当初予定していた国内・国外の出張の一部を来年度にまわすことになった.したがって,その分の研究費を次年度にまわし,国内外の専門家と討論し,より多くのアプローチを習得し最終結果に組み入れるべく,主に国内外の出張旅費に使用する予定である.具体的には,日本人研究者のもとへの研究連絡のための出張と,議論と成果発表のための国内研究集会参加を6, 7回予定している.また,外国旅費に関しても,関連する研究者との議論のための出張と,国際研究集会「The 21th International Conference on Finite or Infinite Dimensional Complex Analysis and Applications」(中国南京),「XXII Rolf Nevanlinna Colloquium」(フィンランド)での成果公表を予定している.さらに,謝金としては,談話会の講演,勉強会での講師などの講演謝金を計画している.得られた結果の改良および発展のため,本研究の成果全般と関連する研究の紹介および今後の問題設定をまとめた研究資料を作成し,関連する研究者の便宜に供するようにようにしたい.
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