研究課題/領域番号 |
23740106
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
瀬戸 道生 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30398953)
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キーワード | ハーディ空間 / ディリクレ空間 / 再生核 / グラフ理論 |
研究概要 |
平成24年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1.「グラフ理論への応用」 研究代表者がこれまで研究を続けてきた再生核ヒルベルト空間の理論をグラフ理論へ応用した。グラフの頂点を定義域とする関数からなる線形空間を考える。そこにグラフの隣接関係から定まる内積を導入すると、ディリクレ・ソボレフ型の再生核ヒルベルト空間が構成される。ここまではよく知られていることである。今年度はこの再生核ヒルベルト空間に関するグラム行列を研究した。グラム行列とは再生核どうしの内積の値(=再生核の各点での値)を成分とする行列であり、そこには再生核ヒルベルト空間の情報が詰まっている。今の場合、それはグラフの情報そのものに他ならない。この研究は交付申請書に平成24年度以降の研究計画の一つとして述べたことの実現であり、この意味で本研究課題における意義のある進展である。なお、この成果はグラフ理論の専門家である須田氏(愛知教育大学)、谷口氏(松江高専)との協力の下で得られたものであり、彼らとの共著論文 ``Gram matrices of reproducing kernel Hilbert spaces over graphs'' は専門誌に投稿、現在査読中である。また、現在これに続く論文を作成中である。 2.本研究課題における本来の研究対象は多変数解析関数からなる再生核ヒルベルト空間とそれに付随するベクトル束であるが、平成24年度は研究代表者の多変数関数論、幾何学に関する知識不足を補うことに充てた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に平成24年度以降の研究計画として挙げたテーマについて論文(査読中)を書くことができた。しかも、グラフ理論の研究者との共同研究により研究の視野が拡がり、平成25年度だけでなくこれからの研究へと引き継ぐことができる新たなテーマを発掘することができた。また、本来の研究対象である多変数解析関数からなる再生核ヒルベルト空間とそれに付随するベクトル束について、平成24年度中に研究代表者の知識不足を補うことができたと考えられる。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.本研究課題の主要な研究対象は多変数解析関数である。このテーマに関し、平成24年度は知識獲得等の準備に充てたので平成25年度からは本来の研究課題に戻ることができる。まずは、多変数関数論の零点を記述する理論を、摂動込みの話に書き換え、それを自己共役作用素の話へと持ち上げることを考える。 2.研究実績の1で述べたグラフ理論の専門家との共同研究から、グラフの準同型写像を再生核ヒルベルト空間の枠組みで扱えることに気付いた。具体的には、準同型写像を再生核ヒルベルト空間上の合成作用素に対応させ、適当な正規化を踏まえることで de Branges-Rovnyak の理論が適用できる。その理論における擬直交補空間と overlapping space が準同型写像の複雑さを測っていると思われる。この二つの空間とグラフの構造との関係を研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の繰り越しが生じた状況:平成23年度からの繰り越し額をほぼそのまま平成25年度へと繰り越すことになってしまった。平成24年度の交付額についてはほぼ予定通りの使用ができた。なお、平成23年度に繰り越しが生じたのは学内での業務負担増加がその原因である。 平成25年度の使用計画: 1.数学専門書(多変数関数論、幾何学、グラフ理論)の購入に40万円を充てる。 2.国内での研究成果発表、研究打合せのための出張費として50万円を充てる。数理解析研究所での関連する研究集会、日本数学会(函数解析学分科会)等の参加を予定している。 3.海外での研究成果発表と研究打合せのために50万円を計画する。受け入れ先は現在選定中である。
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