1.2013年9月にYang氏(New York州立大学Albany校)を訪問し、本研究の主題である再生核ヒルベルト空間に付随するベクトル束について議論をした。その結果、加群構造をもつある程度良い再生核ヒルベルト空間であれば、その部分加群をベースとなる空間と再生核から構成される自己共役作用素に対応する不定値内積空間とのテンソル積に分解できるという結果を得ることができた。この成果は共著論文としてまとめるべく現在執筆作業中である。なお、研究代表者が分担したパートについては2013年度関数環研究集会にて「Hardy空間の加群構造に現れるKrein空間について」という題目で研究発表を行った。 2.グラフから定まる再生核ヒルベルト空間を研究した。特に、グラフの準同型写像から誘導される合成作用素を詳しく調べ、再生核ヒルベルト空間との関連を明らかにした。以上の結果は須田氏(愛知教育大)、谷口氏(松江高専)との連作の共著論文``Gram Matrices of reproducing kernel Hilbert spaces over graphs I and II" としてまとめ、Iについては Linear Algebra and its Applications に出版され、IIについては現在査読中である。 3.2の研究を進める上で合成作用素を係数とするある作用素方程式が浮上してきた。現段階で必要なのは離散的な場合であるが、連続的な場合の対応する問題を合成作用素の専門家数名ににたずねてみたところはっきりとした回答が得られなかった。そこでこの問題に着手した結果、Pickの補間問題との関連に気付いたので、それを細川氏(茨城大)との共著論文``Some remarks on operator equation $C_{\varphi}=C_{\psi}X$"としてまとめ専門誌に投稿した。
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