研究概要 |
半導体工学・プラズマ物理に現れる双曲・楕円型連立方程式系で与えられるモデルに対する初期値境界値問題の解の挙動を解析することが本研究の目的である.平成25年度は, プラズマが接触する固定壁付近に形成されるシースの数学解析に注力した.プラズマ物理学では Euler-Poisson 方程式を用いた形式的な議論により, シースが形成される為の条件として Bohm 条件が提案されている. この条件は,プラズマ中の正イオンが極超音速でシースに流入しなければならないことを意味する. 電子と単一種類の正イオンで構成されるプラズマについては, 1950年頃に H. Bohm により Bohm 条件が導出されている. 一方, 工学で利用されるプラズマの多くは, 電子と複数種類の正イオンが混在する多成分プラズマであり, K.-U. Riemann はこの多成分プラズマに対して Bohm 条件を導いている. 平成24年度には, 多成分プラズマに対する Bohm 条件に数学的な正当性を与えることを目的として, Bohm 条件下で Euler-Poisson 方程式の定常解が存在して時間的に漸近安定であることが証明され,シースは定常解に対応することが解明された. 平成25年度は, 安定性解析における Bohm 条件の必要性を示唆する結果を得た. さらに,前年度までに, Euler-Poisson 方程式を用いて,シースとプラズマが遷移している状態を数値的に解析し,モデル方程式の解は時間経過とともに定常解と希薄波の重ね合わせに漸近している様子が確認されている.平成25年度は,この事実を数学的に証明することに取り組み,部分的な成果が得られた.
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