研究課題/領域番号 |
23740114
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
日比野 正樹 名城大学, 理工学部, 准教授 (10441461)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 関数方程式論 / 複素解析 / 発散級数 / 総和可能性 / 解析接続 |
研究概要 |
2複素変数羃零型と呼ばれる、原点を特異点とする1階線型偏微分方程式(しかもその中で最も一般的な形の方程式)において、その発散羃級数解(以下、「発散解」と略記)がBorel総和可能(すなわち、開きの大きさがπより大きい角領域上で正則な解で、発散解をGevrey型の漸近展開に持つものが存在する)となるために方程式の係数が満たすべき条件を与えること、を最終目標として研究を行いました。発散解がBorel総和可能となるための条件を、(1)方程式の係数に対する或る種の解析接続可能性;(2)係数の偏導関数に対する或る種の増大(または減少)条件;の形で与えることが具体的な研究目標でした。まず、過去の研究により、(1)の条件を与えるためには「方程式に形式的Borel変換と呼ばれる変換を施すことによって得られる或る1階線型偏微分作用素に対して、その特性曲線の具体的表示を与える」ことが必要であることが分かっており、今年度は、この具体的表示を与えることを最初の目標として研究を行いました。結果として、目標を達成致しました。さらに、その結果を基にして、(1)の条件の予想も出来ております。特性曲線の具体的表示を与えることは、上記の1階線型偏微分作用素に付随する特性常微分方程式(それは非線型連立常微分方程式)の具体的解表示を与えることと同値であり、従って今年度の研究成果は、或る非線型連立常微分方程式の具体的解表示を与えたことにもなります。既に、方程式の形に制限を課した場合においては、同様の結果が研究代表者によって得られていました。今年度、制限を課さない最も一般的な羃零型方程式に対する結果が得られたことにより、最初に述べた最終目標に到達するための足掛かりが出来たことになります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、【研究実績の概要】の項で述べた(1)、(2)の条件を予想し、さらにその予想の証明まで完結させる予定でした。しかしながら実際には、研究成果は(1)の条件を予想することに留まりました。その理由としては(1)平成23年度より研究代表者の所属機関が以前の岡山理科大学から現在の名城大学となり、新しい授業科目の準備に多くの時間を費やす必要があったこと;(2)所属機関の学部再編に関連して研究代表者が多くの会議に出席する必要があったこと;が挙げられます。研究そのものは目標達成に向けて少しずつ進んでおりますが、研究を遂行する時間が非常に少なくなってしまったことが、予定より研究の達成度が遅れてしまった最大の理由だと考えております。
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今後の研究の推進方策 |
当面は、これまでの研究を続け、目標の達成を目指します。具体的には、【研究実績の概要】の項で述べた(2)の条件を予想し、(1)、(2)の条件が予想出来た後、その条件の下で、発散解がBorel総和可能であることの証明を試みます。証明方法としては、過去の研究で用いた方法と同じ方法を採用します。それは、(i)方程式に形式的Borel変換を施して、1階線型偏微分作用素を主要部とする合成積方程式を導く;(ii)さらに特性曲線の方法を用いて、(i)で得られた合成積方程式を積分方程式に変換する;(iii)逐次近似法を用いて、(ii)で得られた積分方程式の解が、或る方向に無限遠方にまで解析接続可能かつ指数関数増大度を持つことを証明する;という流れで行う証明方法です。実際の研究は、条件を予想する前に上記の(ii)まで研究を進め、その段階で得られた積分方程式を解析して(2)の条件を予想し、最後に(iii)によって研究を完結させる、という順序で行う予定です。これまで、(ii)の積分方程式を求めることが一般の方程式の場合に出来なかったのですが、今年度の研究で特性曲線の具体的表示が得られたことにより、この積分方程式が次年度の早い段階で求められるのではないかと期待しております。その後の条件予想および証明に関しては、得られた積分方程式をこれまで以上に精密に扱う必要がありますが、過去の研究成果を参考にして研究を続け、最終目標に到達出来ればと考えております。上記の研究は、線型方程式に対するものでしたが、方程式の非線型化も重要な課題です。既に半線型の羃零型方程式に対しては発散解の一意存在が研究代表者によって証明されており、その結果、半線型方程式に対しても、この発散解を漸近展開に持つような正則解の存在問題を考えることが可能になっています。この問題の研究に、出来るだけ早い時期に着手する予定です。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、研究打ち合わせや学会参加をする時間を取ることが出来ず、「収支状況報告書」の「次年度使用額」が0円にならないという結果となりました。次年度は、今年度の研究成果を公表出来る形にまとめ、積極的に発表していく予定でおります。「次年度使用額」と翌年度に請求する研究費の多くは、上記の発表のための旅費と、書籍の購入に使用致します。特に書籍については、研究代表者の研究対象である「複素解析的微分方程式」「漸近展開」等に関連する書籍の多くが絶版になっており、高額な古書を購入する必要が生ずる可能性もありますので、研究費の5~6割を使用する予定です。
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