| 研究実績の概要 |
本研究の当初の目的は, 非線形消散型波動方程式における, 線形項からもたらさる消散及び分散の効果と非線形項から生じる集約の効果のバランスを (1) 非線形連立系における相互干渉 (2) 空間拡散の高階化 (3) 障害物のある外部問題 という3条件下で精密に見積もり, 時間大域可解性や解の漸近挙動を明らかにすることにあった.
本年度は昨年度に引き続き, (2)の延長として, 高階拡散項と消散項を併せ持つ非線形偏微分方程式の解の性質の同定に取り組んだ. この問題に対しては特に, 昨年度までの吉川周二氏(愛媛大学)との共同研究によって, 非線形消散型梁方程式はエネルギーが非負となるような非線形項に対しては, エネルギークラスでの初期値の大きさに依らない時間大域適切性とエネルギーの時間減衰評価が得られていた. そこで本年度はエネルギーを非負にするとは限らない非線形項を中心に考察を行った.その中で, 昨年度知見が得られていた, 基本解の重み付き評価に対する正則性の損失に対して, 高階拡散項の平滑化効果を用いることで非線形項の正則性の損失の一部を緩和することが分かった.その結果, 小さい初期値を持つ非線形消散型梁方程式や非線形膜方程式に対する時間大域適切性と解の時間減衰評価及び漸近挙動を同じ枠組みで示すことに成功した. 一方, エネルギー法を見直すことで非線形項の選び方によって, 初期値のノルムを十分に大きくとれば時間大域解の非存在が従うことも分かった.
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