研究課題/領域番号 |
23740119
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
竹山 美宏 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60375392)
|
キーワード | 量子KZ方程式 / 可積分系 / 二重アフィンヘッケ代数 |
研究概要 |
今年度の研究では、量子KZ方程式の可積分系への応用に関する問題として、デルタ関数型の斥力相互作用をもつ1次元ボゾン系の離散化について考察した。 デルタ関数型の相互作用をもつボゾン系を記述するハミルトニアンに対する固有値問題は、周期境界条件の下で Lieb と Lineger がベーテ仮設法によって解決した。この問題は、デルタ関数の台を一般のアフィンワイル群の鏡映面にした場合に拡張されており、その代数的構造が二重アフィンヘッケ代数で記述できることが、Emsiz, Opdam, Stokman の研究により知られている。そして、この場合にベーテ仮設法を使ってハミルトニアンの固有関数と構成する問題は、楕円型の量子KZ方程式の退化と関係することが、Hartwig, Stokman により指摘されている。 今年度の研究では以上の問題の離散版を考察した。近年、1次元非対称単純排他過程などの可積分な確率過程の研究が広く行われている。そのひとつである O'Cornell-Yor モデルの多点モーメント関数は、デルタ関数型の相互作用をもつボゾン系のハミルトニアンの離散版に対する固有関数となっている。今年度の研究では、2つのパラメータを持つ離散的なハミルトニアンで、特別な場合として O'Cornell-Yor モデルに対応するハミルトニアンを含むものを構成し、その固有値問題が二重アフィンヘッケ代数の表現を用いて解けることを示した。デルタ関数型の相互作用をもつボゾン系の離散化は、マクドナルド球関数との関連から van Diejen によって既に研究されているが、本研究では異なる観点から離散化を構成し考察したことになる。我々の構成したハミルトニアンと量子KZ方程式の関係を考察することは今後の課題であるが、今年度の結果により量子KZ方程式の代数的構造について新たな観点が得られるものと期待している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子KZ方程式そのものの代数的構造の解析を今年度の研究内容として予定していた。この点に関しては、デルタ関数型の相互作用をもつ1次元ボゾン系の離散化の観点から理解が深まったように思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、Smirnov-Fatteev 模型に関係する量子KZ方程式の代数的構造について研究を進める。特に、非対称マクドナルド多項式を使った多項式解の構成について考察する予定である。まら、平成23年度に得られた多重ゼータ値の q 類似に関する結果についても、代数的観点から理解を深めたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額として計上のある37,566円については、平成25年3月に既に旅費として使用済であるが、支払い事務手続き上、支払いが4月になった。
|