研究課題
当初予定していた量子KZ方程式の解空間の解析の研究については満足できる結果が得られなかった。しかし、可積分系への応用に関する問題として、多重ゼータ値の q 類似が満たす関係式についての研究、および、可積分な確率過程から生じる1次元ボゾン系の離散化の研究については一定の成果が得られた。前者の問題については、一昨年度の研究で制限和公式と呼ばれる線形関係式を証明した。今年度も多重ゼータ値の q 類似について研究し、それが満たす関係式を組織的に記述するための代数的な枠組みを構成した。多重ゼータ値に関しては、2変数の非可換多項式環上に定義される2種類の可換な積構造(調和積と積分シャッフル積)を使って、その線形関係式を記述できる。今年度の研究では、この理論の q 類似を構成した。我々が構成した代数的な枠組みは、多重ゼータ値の q 類似を量子KZ方程式の観点から研究するための基礎となる。後者の問題については、昨年度の研究において、O'Cornell-Yor モデルにおける多点モーメント関数の時間発展を記述するハミルトニアンの離散化を構成した。さらに、我々のモデルがアフィンヘッケ代数の対称性を持つことを示し、これを用いて固有関数を作り出す作用素を構成した。この作用素を使えば対称な固有関数を構成できるが、パラメータを特殊化すると、Hall-Littlewood 多項式と呼ばれる特殊関数や、旗多様体の幾何学に現れるグロタンディーク多項式が得られる。このように、我々のモデルは様々な数学的対象と関係することが期待でき、今年度も引き続きこの観点から考察を進めている。
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FUNKCIALAJ EKVACIOJ
巻: 57 ページ: 107-118
http://www.math.sci.kobe-u.ac.jp/~fe/xml/fe57-1-5.xml
Symmetry, Integrability and Geometry : Methods and Applications (SIGMA)
巻: 9 ページ: 15
10.3842/SIGMA.2013.061