研究課題
Henon写像と呼ばれる平面上の微分同相写像の反復合成による力学系の定性的な構造の変化、すなわち大域分岐の問題を精密に調べることが本研究の目標である。これまでに、リオデジャネイロ連邦大学(ブラジル)のSamuel Senti氏と共同研究を行い、最初の分岐パラメーターにおける力学系をエルゴード理論的、統計熱力学的観点から調べ、自然なポテンシャル関数に関する平衡測度の存在と一意性、およびその統計的性質についてほぼ期待通りの成果を得た。これらの結果を手がかりとして、Henon写像の大域分岐の問題についての新たな知見を得ることができると期待される。平成24年度はこれらの成果を二本の論文にまとめ、査読つき学術雑誌に投稿した。うち一本はNonlinearityに受理され、現在は印刷中である。残る一本についても、査読者の意見はおおむね受理に好意的であり、現在は査読レポートに従って改訂中である。また、Henon写像と密接に関連する2次写像のマルチフラクタル解析に関しては広島大学の鄭容武氏と共同研究を行い、観測関数の時間平均のレベル集合のハウスドルフ次元を不変確率測度のエントロピーとリャプノフ指数で表す公式を導いた。この結果をまとめた論文はすでにErgodic Theory and Dynamical Systemsに受理された。
2: おおむね順調に進展している
Henon写像の研究についてはすでに論文二本を投稿し、一方は受理され、もう一方も受理が近い状態にあると思われるため。また、当初の研究目的であったHenon写像と関連してカオス的な2次写像のマルチフラクタル解析に関する研究が進み、論文一本を受理させることができたため。
まず、Henon写像の最初の分岐パラメーターでの力学系の構造について、さらに精密に調べる。具体的には、マルチフラクタル解析を行ったり、大偏差原理が成り立つかどうかについて調べる。次に、こういった構造がパラメーターの変動に伴いどう変化してゆくかを調べる。
国外出張を1件、国内出張を数件予定している。他に、書籍数点の購入を予定している。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Nonlinearity
巻: 26 ページ: 1719-1741
10.1088/0951-7715/26/6/1719
Ergodic Theory and Dynamical Systems
巻: published online ページ: 1-26
10.1017/etds.2012.188