研究実績の概要 |
本研究の目的は特異点を持つラグランジュ部分多様体のフレアー理論の構築であった。当初の研究実施計画はその特異点の補集合を念頭にした凹型の無限遠を持つ非コンパクトなシンプレクティック多様体と、その中の凹型の無限遠でルジャンドル部分多様体のシリンダーの形をしたラグランジュ部分多様体に対するフレアー理論を構築することを目標に、まずはそのトイモデルである境界付き多様体のモースホモロジーにおける高次の積構造を構成することであった。そのために本研究では境界付き多様体上のモース関数でその勾配ベクトル場が境界に接するようなものに関して厳密なハンドル分解を与え(プレプリント Morse homology of manifolds with boundary revisited, arXiv:1408.1474)これにより交叉積を構成することが出来た(現在論文を執筆中)。ただし、より高次の積に関しては組み合わせ的に複雑になり、まだその構成には至っていない。 そして本来の目標であったフレアー理論に関しては凹型の無限遠を持つ非コンパクトなシンプレクティック多様体における擬正則曲線のモジュライ空間の構成が未完成であり、これは今後の研究課題である。一方、最終年度においてラグランジュはめ込みのフレアーホモロジーの応用として完全ラグランジュはめ込みの置換エネルギーの評価式を与えることに成功した(プレプリント Symplectic displacement energy for exact Lagrangian immersions)。 また本研究課題の期間中に国際研究集会East Asian Symplectic Conferenceを2回開催した(開催地:韓国(2011年)、鹿児島(2013年))これにより東アジアにおけるシンプレクティック幾何の若手研究者たちの間で活発な研究交流を行うことが出来た。
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