研究課題/領域番号 |
23740124
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
佐藤 洋平 埼玉大学, 理工学研究科, 講師 (00465387)
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キーワード | 変分問題 / 楕円型偏微分方程式 / シュレディンガー方程式 / 摂動問題 |
研究概要 |
本年度の研究も昨年度から引き続き南開大学のChern数学研究所・ユタ州立大学のZhi-Qiang Wang教授と連立シュレディンガー方程式の摂動問題の共同研究を行った。昨年度の研究では3本の方程式から成る連立シュレディンガー方程式において、ふたつの相互作用項の係数が負で、ひとつの相互作用項の係数が正のとき、正の係数が十分大きいときに少なくとも一つ正値解が存在することを示した。本年度の研究では、同じ状況の下で領域に対称性を仮定したときに、正値解の多重存在を示した。この結果は「Multiple positive solutions for Schr\"odinger systems with mixed couplings」というタイトルの論文にまとめ、現在投稿中である。 また、東京工業大学数学科の柴田将敬助教と時間に依存しない非線形シュレディンガー方程式の正値解の存在に関する研究を行った。変分的手法によるこの方程式に対するの解の存在の証明では、解の近似列であるPalais-Smale 列の有界性を得ることが鍵になる。一方で方程式が空間変数に依存しないときは、Berestycki-Lionsによって、正値解が存在するための非線形項のほとんど必要十分条件が得られている。Jeanjean-Tanakaはポテンシャル関数にある種の可積分性の仮定して、Berestycki-Lionsの条件の下で有界なPalais-Smale 列を得ている。しかし、周期ポテンシャル関数はこの可積分性の仮定を満たさなかった。そこで、柴田将敬助教との共同研究では、ポテンシャル関数が周期関数のときに、従来の仮定より弱い仮定の下で有界なPalais-Smale 列を構成できることを示し、時間に依存しない非線形シュレディンガー方程式の正値解の存在を証明した。本研究結果は「Existence of a positive solution for nonlinear Schr\"odinger equations with general nonlinearity」というタイトルで現在学術雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的では相互作用項の係数が0に近いときの摂動問題を研究することであったが、研究の結果、相互作用項が大きいときも摂動問題とみなせることがわかり、そちらの方向での研究で多くの結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度のZhi-Qiang Wang教授との共同研究で得られた正値解の個数には上限が存在している。今回得た解は、対称性をもつ関数に制限したときのエネルギー最小解として得ているからである。しかしエネルギー極小解まで考慮すれば、実際は任意の自然数個の正値解が存在すると考えられる。そこでこの上限を外すことに挑戦したい。対応策としては円環領域上の単独のシュレディンガー方程式の正値解の多重存在の結果の応用が考えられる。実際、円環領域上の単独のシュレディンガー方程式では、円環の半径を大きくしたときに正値解の多重存在が得られている。この問題のときは、正値解は4次元以上では、称性をもつ関数に制限したときのエネルギー最小解として得られているが、3次元のときは、エネルギー極小解として得られている。我々の期待する解もエネルギー極小解であり、解のピークのパターンも似ていることから、応用できることが期待できる。 また、柴田将敬助教と時間に依存しない非線形シュレディンガー方程式の正値解の研究では、ポテンシャル関数が周期関数のときに、非線形項の条件を従来の条件より弱めたもののBerestycki-Lionsの条件よりも強い条件で解の存在を証明している。したがって、さらに弱い条件の下で解の存在を得られないかを研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム、事業名「数理と物理の深化と展開、数学研究所を拠点とする国際ネットワークハブの形成」の派遣研究員として夏季2か月と春季2か月海外に派遣されていたため、資金を使用する機会が十分に無かったため。 主に以下の事項に研究費を使用する。1.埼玉大学で行うセミナーに本研究に関連する講演者を呼ぶときの旅費・謝金、2.今年度の研究成果を発表するための旅費、3.Zhi-Qiang Wang教授との共同研究をするための旅費、4.研究に必要な書籍・計算機などの購入費
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