研究課題/領域番号 |
23740130
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平田 潤 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (10580483)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 変分法 / 微分方程式 |
研究概要 |
変分的な手法を用いて非線型楕円型方程式の非自明解の存在問題の研究に取り組んだ。方程式が空間変数に依存しない場合での非自明解の存在問題はこれまで多くの研究がなされており、ほとんど必要十分条件に近い形で非自明解の存在定理が知られている。一方で、方程式が空間変数に依存する場合には非自明解の存在問題は非常にデリケートなものとなり、微小な摂動によっても非自明解の存在・非存在が変化する場合があることが知られている。 本研究では主に方程式が空間変数に依存する場合を扱い、既存の結果よりも広範囲の方程式に対して適用可能な非自明解の存在定理を得ることを目的としている。特に平成23年度の研究では、空間変数に依存する非線型シュレディンガー方程式において、その方程式が極限で正値解を一意にもつ場合に、その一意な正値解を用いて元の方程式の正値解を導くことに成功した。この研究に先行する研究では Bahri-Li (1990) が、非線型項を冪関数の場合に限って非自明解の存在定理を得ている。非線型項が冪関数の場合は、変分的に非常に扱いやすい構造を多く備えており、エネルギー評価を行いやすい。本研究では先行の研究よりも精密なエネルギー評価を与える新しい手法を用いて、非線型項が冪関数の場合でなくとも、より一般的な条件のもとで方程式の非自明解の存在定理を与えることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究では、空間変数に依存する非線型シュレディンガー方程式に対して、その極限方程式が正値解を一意にもつ場合に、その極限解を用いて元の方程式の正値解を導く研究を行った。この手法における先行研究では、非線型項が冪乗関数の場合のみを扱っており、特にその単調増加性に強く依存したエネルギー評価を用いて、正値解の存在定理を与えている。本研究では、これまでの手法とは別の手法を用いて、より精密なエネルギー評価を与えることに成功した。とくにこの手法では、冪乗関数のみならず、単調性のない他の非線型項に対しても広範囲に適用可能であり、既存の存在定理よりも一般的な形で正値解の存在定理を導いた。 この結果を応用し、さらなる改良が可能であると考えているが、本研究の4年間の計画の1年目においては、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き非線型楕円型方程式の非自明解の存在問題に取り組む。非線型シュレディンガー方程式に対しては平成23年度の研究結果を基に、極限方程式が一意な正値解を持つ場合に、さらに一般的な非線型項に対する正値解の存在定理を得ることを目指す。とくに本研究で得たエネルギー評価は Allen-Cahn 方程式などに現れるタイプの非線型項にも適用できるため、既存の研究では技術的な問題で扱えなかったこれらの非線型項をもつ方程式に対しても正値解の存在を示すことが可能と思われる。 また平行して当初の計画に基づき、大域的な条件を課さない非線型楕円型方程式の非自明解の存在問題にも取り組む。従来の研究のほとんどは非線型楕円型方程式に対称性や単調性などの大域的な条件を課して非自明解の存在定理を導いている。これらの条件は変分的な手法を用いる上で扱いやすいものになっているが、一方で適用可能な方程式に制限を加えている。 しかし近年、 monotonicity method と呼ばれる手法や本研究で与えたエネルギー評価など、これらの大域的な条件を必要としない手法が生み出されており、これらを用いることで従来よりも一般的な条件のもとで非線型楕円型方程式の非自明解の存在を示すことが可能であると思われるため、この研究に取り組むことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は当初計画していた研究集会への参加を次年度に繰り越すなど、研究費の使用計画に若干の変更を行った。本研究では専門知識を必要とするため、洋書を含む書籍を購入することが必要であり、また最新の研究結果などの知識を得るために、研究集会への参加や、国内外の研究者との交流が必要であるため、それらの目的を達成するために研究費を使用することを計画している。
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