研究課題/領域番号 |
23740130
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平田 潤 早稲田大学, 理工学術院, 招聘研究員 (10580483)
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キーワード | 微分方程式 / 変分法 |
研究概要 |
変分的なアプローチを用いての非線型楕円型方程式の研究を行っている。非線型楕円型方程式は、物理現象の定常状態を表すときなどによく用いられる方程式であり、一般的な条件のもとで方程式およびその解を詳しく解析することは、広く科学一般の分野で応用できるものである。 本研究では主に、シュレディンガー方程式などに代表されるタイプの非線型楕円型方程式に対して、ポテンシャル項および非線型項がより一般的な状況のもとで、非自明解が存在するための条件およびその解の性質を明らかにすることを目的としている。 とくに方程式が空間変数に依存する場合には、空間変数に依存しない場合に比べて、解の存在問題はデリケートな扱いが必要となることが知られている。本研究においては、方程式が空間変数に依存する場合に、先行する研究よりも広く適用できるような条件のもとで、方程式の非自明解の存在を示すことに成功している。 変分的なアプローチを用いて研究する際には、汎関数のエネルギー評価が重要な役割を果たしている。先行する研究では主にべき乗の形で表されるような非線型項に限定して適用できるような方法でエネルギー評価を行うことが多かったが、本研究ではより一般的な非線型項にも適用できるような新しいエネルギー評価の方法を紹介している。 また方程式が空間変数に依存しない場合においては、Berestycki-Lions (1983) および Berestycki-Gallouet-Kavian (1984) らの行った研究が有名であるが、本研究ではこれらの先行する研究で必要とされていた条件を緩和することに成功している。またこの際に、変分的な手法を用いることにより、従来の方法よりも幅広い応用が期待できる証明方法を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究での目的の1つは、非線型楕円型方程式の非自明解の存在定理を得ることであるが、変分的なアプローチを用いてこの問題に取り組む際に主に課題となるのは、汎関数の臨界点を求める際に使われる Palais-Smale 列と呼ばれる関数列の収束性の議論である。とくに方程式が空間変数に依存する場合には、この議論は非常にデリケートな扱いが必要となる。本研究では、いくつかの条件のもとで汎関数の精密なエネルギー評価を行い、 Palais-Smale 列の収束を示すことに成功している。しかし、これらの結果にはまだ改良の余地があると考えられるため、引き続き研究を進めていく。このため結果を論文にまとめるなどの作業にやや遅れが生じているが、研究は概ね順調に進んでおり、計画どおりに達成できるものと思われる。 また非自明解の存在問題の研究を優先したため、当初計画していたコンピュータによる数値計算なども、計画を前後して行う必要が生じたが、全体の計画に支障はないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き変分的なアプローチによる非線型楕円型方程式の研究を行う。本年度はとくに方程式の解の構造および挙動に関する研究を進めていきたい。そのためにコンピュータを用いた数値計算なども積極的に活用していくことを計画している。 また並行して、これまでに行ってきている一般的な条件のもとでの方程式の解の存在問題をさらによい結果に導けるように研究をすすめていく。 さらに4年間の集大成として、これまでの研究結果を論文にまとめ、学術雑誌へ投稿することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、解の構造および挙動を調べるために、コンピュータによる数値計算やシュミレーションを予定していたが、解の存在問題の方により進展がみられたため、その研究を優先し、コンピュータを用いた研究を次年度に計画変更を行った。このため研究費の使用額が計画と異なることになった。 非線型楕円型方程式の非自明解の構造および挙動を調べるために、コンピュータによる数値計算やシュミレーションなどを行う必要があり、それらの研究環境を整えるために使用する。 また引き続き、研究集会などに参加し、研究者との連携および情報収集のために使用する計画である。
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