研究課題/領域番号 |
23740131
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
渡辺 達也 京都産業大学, 理学部, 准教授 (60549749)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 大域解析学 / 関数方程式論 / 変分法 / 準線形方程式 |
研究概要 |
本研究では、プラズマ物理においてsuperfluid film方程式として導出される準線形シュレディンガー方程式において、定常問題として得られる準線形楕円型方程式の解構造(一意性・多重性・形状・漸近的プロファイルなど)を解析した。今年度の具体的な研究実績は以下の通りである。1・パラメータが十分大きい場合:本研究では常微分方程式のテクニックを用いて、パラメータが十分大きい場合のエネルギー最小解の一意性・非退化性についての結果を得た。交付申請の時点では余分な条件が必要であったが、今年度の研究によって条件が外れ、より良い結果を得ることができた。当研究論文は、足達慎二(静岡大学)との共同研究として、『Uniqueness of the ground state solutions of quasilinear Schrodinger equation』の題名で学術雑誌「Nonlinear Analysis」に掲載された。2・パラメータが十分小さい場合:本研究では摂動法・爆発解析などのテクニックを用いて、パラメータが十分小さい場合のエネルギー最小解の一意性・非退化性についての結果を得た。当研究論文は足達慎二(静岡大学)との共同研究として、『Asymptotic properties of ground states of quasilinear Schrodinger equations with H^1-subcritical exponent』の題名で学術雑誌「Advanced Nonlinear Studies」に掲載された。 本研究結果は多くの研究者が興味を持っていた内容であり、上記二つの研究結果について、国内の研究集会で口頭発表を行ったところ、様々な研究者から好感触を得ただけでなく、海外からの問い合わせもあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の全体的な目標は、定常問題である準線形楕円型方程式エネルギー最小解の一意性・多重性について、指数・パラメータによる分類を行うことであるが、今年度の研究によって、パラメータが十分大きい場合とパラメータが十分小さい場合の一意性・非退化性の結果を得ることができた。研究計画を遂行していく上で、順調なスタートを切れたと考えている。 助成金についても、おおむね計画通り使用できた。今年度はノート型パーソナルコンピュータを購入し、研究成果の口頭発表に存分に活用することができた。物品費全体では10万円程度繰り越しを行った。これは購入を希望していた解析学関係書籍が洋書であったため、入手が困難であったという理由による。旅費については全体的に計画通り使用した。 また、今年度は情報収集・意見交換を活発に行うため、研究集会を2回主催した。1つ目は京都産業大学にて、辻井芳樹氏(京都産業大学)と共同で研究集会 『数理現象における多様な解析的アプローチの研究』を開催し、2つ目は大阪市立大学にて、佐藤洋平氏(大阪市立大学)と共同で『OCAMI楕円型方程式研究集会』を開催した。また、細野雄三氏・柳下浩紀氏(京都産業大学)と共同で、KSU非線形解析セミナーを京都産業大学にて開催した。これらを主催することによって、様々な情報収集を行うことが出来ただけではなく、新たに柴田将敬氏(東京工業大学)との共同研究の話が持ち上がり、現在研究を行っている。 以上の理由により、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに得られた結果を下に、中間範囲における解の一意性・多重性を分岐理論もしくは写像度を用いて解析し、全体的な解構造の分類を行う。さらに指数がソボレフ優臨界の場合の極限方程式を明らかにし、解の一意性・多重性・非退化性を得ることを第二の目標とする。また、本研究で現れる双対変分構造を与える変換の数学的意味付けを探る。具体的には、一般の準線形楕円型方程式に対し、微分項にどういった構造があれば本研究で現れるような双対変分構造が得られるかを考察し、同時に解の正則性と変換可能性との関連等も考察する。さらに、変換による線形化作用素のスペクトルの関係を考察する。 今後も前年度に引き続き、足達慎二氏(静岡大学)を研究協力者として研究を行う。また、新たに柴田将敬氏(東京工業大学)を共同研究のメンバーに加える。本研究を推進するため、研究協力者と定期的に研究打ち合せを行う。さらに、必要に応じて、日本国内における楕円型方程式の爆発解析の第一人者である高橋太氏(大阪市立大学)や、シュレディンガー方程式の安定性解析の第一人者である太田雅人氏(東京理科大学)らと積極的に議論を交わし、有益な助言を得たいと考えている。 また、国内外の研究集会に積極的に参加し、様々な研究者と積極的に情報交換を行う。同時に、前年度と同様に研究集会:OCAMI楕円型方程式研究集会・数理現象における多様な解析的アプローチの研究・KSU非線形解析セミナーを主催し、情報収集および共同研究のきっかけを作っていきたい。 昨年度からの繰り越し金140,000円については、うち100,000円を新たに共同研究を行う柴田将敬氏との研究打ち合わせ旅費に使用し、残りの40,000円を解析学関係書籍購入に使用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も前年度に引き続き、足達慎二氏(静岡大学)を研究協力者として研究を行う。また、新たに柴田将敬氏(東京工業大学)を研究協力者に加える。本研究を推進するため、研究協力者と定期的に研究打ち合せを行う。さらに、日本国内における楕円型方程式の爆発解析の第一人者である高橋太氏(大阪市立大学)や、シュレディンガー方程式の安定性解析の第一人者である太田雅人氏(東京理科大学)らと研究打ち合わせを行い、有益な助言を得たいと考えている。 また、次年度も前年度と同様に、研究集会:OCAMI楕円型方程式研究集会・数理現象における多様な解析的アプローチの研究・KSU非線形解析セミナーを開催する。開催にあたって、講演者の旅費負担・講師謝金支払を必要に応じて行う。同時に、研究計画を実行するための知識を得るため、解析学関係書籍を購入する。昨年度からの繰り越し金140,000円は次年度使用する。うち100,000円を新たに共同研究を行う柴田将敬氏との研究打ち合わせ旅費に使用し、残りの40,000円を解析学関係書籍購入に使用する。 さらに、平成24年度にはアメリカ数学会主催の国際会議"9th AIMS International Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applications"がフロリダで開催される。この研究集会に参加し、成果発表を行うと同時に様々な研究者と交流を図る。
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