研究課題/領域番号 |
23740131
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
渡辺 達也 京都産業大学, 理学部, 准教授 (60549749)
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キーワード | 大域解析学 / 関数方程式論 / 変分法 / 準線形方程式 |
研究概要 |
本研究では、プラズマ物理学においてsuperfluid film方程式として導出される準線形シュレディンガー方程式において、定常問題として得られる準線形楕円型方程式の解構造(一意性・多重性・形状・漸近的プロファイルなど)を解析した。今年度の具体的な研究実績は以下の通りである。 ・パラメータが十分小さい場合の漸近的性質:本研究では非線形項がソボレフ優臨界の場合にエネルギー最小解が爆発することを示し、その漸近挙動についての結果を得た。楕円型方程式においてソボレフ優臨界の場合を扱った研究はほとんどなく、我々が扱う準線形問題特有の現象を捉えることができた。当研究内容は足達慎二氏(静岡大学)・柴田将敬氏(東京工業大学)との共同研究として、『Blow up phenomena and asymptotic profiles of ground states of quasilinear elliptic equations with H^1 supercritical nonlinearities』 の題名で学術雑誌「Journal of Differential Equations」に掲載された。 ・パラメータが十分大きい場合の一意性・非退化性:本研究では2次元で非線形項が指数型の場合に、正値球対称解が一意かつ非退化であることを示した。当研究内容は足達慎二氏との共同研究として『Uniqueness and non-degeneracy of positive radial solutions for quasilinear elliptic equations with exponential nonlinearity』の題名で学術雑誌に投稿中である。 また、非線形波動方程式の周期解や、弾性膜の変形を記述する変分問題に関する結果を得た。これらの研究結果も学術雑誌で発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の全体的な目標は、定常問題である準線形楕円型方程式のエネルギー最小解の一意性・多重性について、指数・パラメータによる分類を行うことであるが、今年度の研究によって非線形項の指数がソボレフ劣臨界であるか優臨界であるかによって、パラメータが十分小さい場合のエネルギー最小解の漸近挙動が劇的に変化することが分かった。また、エネルギー最小解の一意性・非退化性についても、べき型に限らない統一的な手法で結果を得ることができた。さらに本研究によって、双対変分構造を与える変換による線形化作用素のスペクトルの対応が完全に解明できた。研究計画は順調に達成されていると考えている。 助成金についても、計画通り使用できた。今年度は情報収集・意見交換を活発に行うため、京都産業大学にて辻井芳樹氏(京都産業大学)と共同で研究会『数理現象における多様な解析的アプローチの研究』を主催した。また、今年度も細野雄三氏・栁下浩紀氏(京都産業大学)と共同で、KSU非線形解析セミナーを京都産業大学にて開催し、情報収集・意見交換を行うこともできた。 以上の理由により、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
非線形項の指数がソボレフ優臨界の場合の極限方程式を解析し、解の漸近的一意性・非退化性を得ることを第1の目標とする。また今年度までに得られた結果を下に、中間範囲における解の一意性・多重性を分岐理論もしくは写像度を用いて解析し、全体的な解構造の分類を行う。さらに一般の準線形楕円型方程式に対し、微分項にどういった構造があれば本研究で現れるような双対変分構造が得られるかを考察し、同時に解の正則性と変換可能性との関連等も考察する。 今後も前年度に引き続き、足達慎二氏・柴田将敬氏を研究協力者として研究を行う。本研究を推進するため、研究協力者と定期的に研究打ち合せを行う。さらに、必要に応じて、日本国内におけるシュレディンガー方程式の安定性解析の第一人者である太田雅人氏(東京理科大学)らと積極的に議論を交わし、有益な助言を得たいと考えている。また、国内の研究集会に積極的に参加し、様々な研究者と積極的に情報交換を行う。同時に、前年度と同様にKSU非線形解析セミナーを主催し、情報収集および共同研究のきっかけを作っていきたい。 申請者は本研究だけでなく、波動方程式の周期解に対する変分法的アプローチや弾性膜の変形を記述する変分問題の研究も行っている。様々な微分方程式の研究を通じて変分的手法を磨くことは、本研究で扱っているシュレディンガー方程式の研究にも有用と考えられる。したがって、必要に応じて本研究と他の変分問題の研究を同時進行させたいと考えている。
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