研究課題/領域番号 |
23740134
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松井 優 近畿大学, 理工学部, 講師 (10510026)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ラドン変換 / グラスマン多様体 / 構成可能関数 / 超局所解析 / 国際情報交流 |
研究概要 |
平成23年度は,主にグラスマン多様体上の構成可能関数からグラスマン多様体上の構成可能関数へのさまざまな核関数を持つ位相的ラドン変換について,反転公式の導出や像の特徴づけについての研究を行った.まず,通常の核関数とは異なる核関数をもつ,グラスマン多様体上の構成可能関数に対する変形版位相的ラドン変換について,その反転公式の導出,すなわち左逆変換の構成,を行った.これは先行研究で行った通常の核関数を持つ位相的ラドン変換の左逆変換の構成と同様に,グラスマン多様体におけるシューベルトカリキュラスやヤング図形の組合せ論などを用いて結果を得ることができたが,先行研究よりもかなり複雑な幾何学的考察や計算が必要であった.次に,グラスマン多様体上の通常の核関数をもつ位相的ラドン変換について,その像の特徴づけを行った.2つのグラスマン多様体が互いに双対になっている場合には,すでに構成した左逆変換が右逆変換にもなっており,同型定理とも言うべき性質が先行研究で得られていたが,一般の場合には右逆変換の存在は明らかになっていなかった.今回の研究によって,位相的ラドン変換像は2つのグラスマン多様体の不変量を用いたある種の積分方程式によって特徴付けられ,その積分方程式を満たす構成可能関数の集合に制限すれば,すでに構成した左逆変換が右逆変換を与えることを示した.上で述べた変形版位相的ラドン変換に対しても同様の像の特徴づけが可能であると期待されるが,それらの研究は現在進行中である.また,旗多様体上の構成可能関数の位相的ラドン変換について,その反転公式の導出や像の特徴づけを行うべく,次元が小さく特別な核関数を持つ具体的な状況において予備的な考察や計算を行った.平成23年度はアメリカにて積分幾何の研究集会に参加し,専門家と議論を行い今後の自身の研究の展開についていくつかの知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構成可能関数のラドン変換は集合のオイラー数をその測度とする積分論による代数的な背景を持った関数の幾何学的な積分変換である.本研究はグラスマン多様体や旗多様体さらには一般の等質空間上のラドン変換においてその反転公式や像の特徴づけについての考察を行うものである.平成23年度は,主にグラスマン多様体上でのラドン変換という具体的な設定に重点を置いて研究を進める計画であった.グラスマン多様体上の変形版位相的ラドン変換の反転公式や像の組合せ論的な特徴づけについては,問題の設定も具体的であったため当初の計画通りに研究を進めることができ,目標とする結果を得ることができた.また,本年度は旗多様体上の位相的ラドン変換について,いくつかの例については順調に計算を進めることができ,予備考察としていくつか新しい知見を得ることができたと思う.次年度はこの一般化に向けて研究を進めていくが,計算機を活用した研究を取り入れて具体例の計算や一般的な性質の証明を行っていく計画である.また,本研究の目的の一つは解析的なラドン変換の広大な理論に倣い位相的ラドン変換の理論を発展させることを目指すものであるが,平成23年度にはアメリカにてアメリカ数学会の年会や積分幾何の国際研究集会に参加し専門家とラドン変換についてディスカッションを行うことができた.それにより本研究の発展性についていくつかの知見を得ることができたことは非常に良かったと思う.今後ここで得た知見を基に研究を発展させていきたいと思っている.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,平成23年度に得られた結果や知見をさらに発展させる計画である.まずは,現在研究中である変形版位相的ラドン変換の像の特徴づけを完成させる.また,平成23年度に予備的な考察をいくつか行った,旗多様体上の構成可能関数に対する位相的ラドン変換について,その一般的な状況について,反転公式の導出,像の特徴づけ,超局所解析的な挙動の研究を行っていく.効率良く具体例や種々の計算を行えるように計算機を取り入れて研究を進めていく.超局所解析的な挙動の研究については,双対多様体の一般化のような対象を考察することとも関連しており,個々の具体的な状況においてのそれらの性質も非常に重要であると思う.もし一般的な状況で結果が得られない場合には,具体的な状況について詳しく調べていく計画である.また,本研究は解析的ラドン変換の広大な理論に倣い位相的ラドン変換の理論を発展させることを目的としており,今後は対称空間や一般の等質空間上の位相的ラドン変換を定義し,その理論的な理解を目指すべく,上で述べたグラスマン多様体や旗多様体にとどまらず試験的な考察を行っていく.そのためにも解析的ラドン変換に関する知見を得るべく研究交流を行っていく.さらには,位相的ラドン変換の理論の特異点理論への応用として,上で述べた位相的ラドン変換の超局所解析的な挙動の研究により得られるであろう特異多様体の不変量の計算をはじめとしたさまざまな性質を明らかにしていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,本研究の平成23年度に得られた結果や知見について国内外の研究者とディスカッションを行いながら,位相的ラドン変換の理論についてさらなる発展を目指すために研究費を活用していく計画である.主に,特異点理論,超局所解析理論,積分幾何をテーマとした国内外の研究集会やセミナー等に参加するための旅費に研究費を使用する計画である.また,国内外の専門家を招聘し研究講演やセミナーを行ってもらうための謝金を含む費用としても研究費を活用していきたい.本研究では計算機を活用して具体例の計算や一般的性質の発見を行っていくが,計算機や計算用ソフトのバージョンアップのための費用としても研究費を活用する計画である.また,本研究は解析的ラドン変換の広大な理論に倣って,位相的ラドン変換の理論を発展させることを目指すものであり,研究を潤滑に進めるためにも,特異点理論,超局所解析理論,積分幾何などの関連する専門図書を購入し,知識を充実させていくためにも研究費を使用する.平成23年度は,東日本大震災の影響によって,参加を予定していた特に国内におけるいくつかの研究集会が中止または開催期間が縮小となり,それらに参加するための費用として使用する予定だった研究費から未使用額が発生した.平成23年度に使用することができなかった研究費は,平成24年度に国内外の研究集会に参加し専門家と研究交流を行うための費用として活用していく計画である.
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