研究課題/領域番号 |
23740134
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松井 優 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10510026)
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キーワード | ラドン変換 / グラスマン多様体 / 構成可能関数 / 超局所解析 / 国際情報交換 |
研究概要 |
平成23年度に,通常の核関数とは異なる核関数を持つグラスマン多様体上の位相的ラドン変換についてその左逆変換を構成し,また通常の核関数を持つグラスマン多様体上の位相的ラドン変換について像の特徴付けを行った.平成24年度は,通常の核関数とは異なる核関数を持つグラスマン多様体上の位相的ラドン変換について像の特徴付けに関する研究を行った.平成23年度に得られた結果と同様,シューベルトカリキュラスやヤング図形の組合せ論およびグラスマン多様体の幾何的な考察を組み合わせることで,2つのグラスマン多様体と核関数の性質から従う不変量を用いたある種の積分方程式によって位相的ラドン変換像が特徴づけられ,その積分方程式を満たす構成可能関数の集合に制限すれば,平成23年度に構成していた左逆変換が右逆変換を与えることを示した.この結果を得るにあたって,位相的ラドン変換像が満たす積分方程式のさまざまな角度からの考察,および通常の核関数を持つ場合よりもさらに複雑な幾何学的考察,計算が必要であった. 本研究は,解析的なラドン変換の広大な理論に倣い位相的ラドン変換の理論を発展させることを目指しており,平成24年度はその方針でグラスマン多様体や旗多様体に限らず,特に位相的ラドン変換の他分野への応用を念頭に置いて,さまざまな核関数をもつ位相的ラドン変換についてその反転公式や像の特徴付けを行った.一般的な性質を見出し証明するには至っていないが,個々の具体的な状況についてさまざまな興味深い結果が得られており,いくつかの新しい知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構成可能関数のラドン変換は,集合のオイラー数をその有限加法的測度とする積分論における代数的な背景を持った関数の幾何学的な積分変換である.本研究はグラスマン多様体や旗多様体さらには一般の等質空間上のラドン変換においてその反転公式や像の特徴付けについての考察を行うものである.平成24年度は,平成23年度に得られた結果や知見をさらに発展させる計画であったが,通常とは異なる核関数を持つグラスマン多様体上の位相的ラドン変換の像の特徴付けに関しては,当初の計画通り研究を進めることができ,目標とする結果を得ることができた.また,本研究の目的の一つは解析的なラドン変換の広大な理論に倣い位相的ラドン変換の理論を発展させることを目指すことにあるが,平成24年度はその方針に従い,グラスマン多様体や旗多様体に限らず,いくつかの具体的な設定ではあるものの,さまざまな核関数を持つラドン変換の反転公式や像の特徴付けを行うことができた.また,それらのさまざまな分野への応用の可能性を見出すことができた. 一方で,旗多様体上の位相的ラドン変換については,平成23年度に予備考察を行いそこで得られたいくつか新しい知見を一般化する研究を行っていく計画であったが,平成24年度はこの研究をあまり発展させることはできなかった.設定がとても複雑な状況になっており,それまでの得られていた現象の解析のみでは不十分であったので,平成24年度は引き続き予備的な考察を行った.今後計算機を活用して必要な具体例の計算を行い一般的な性質の証明を完成させる計画である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,平成24年度に得られた結果や知見をさらに発展させる計画である.まずは,現在研究中である位相的ラドン変換のさまざまな分野への応用を研究していく.また,平成23,24年度に予備的な考察を行っていた旗多様体上の構成可能関数に対する位相的ラドン変換について,その一般的な状況について,反転公式の導出,像の特徴付け,超局所解析的な挙動の研究を行っていく計画である.効率良く具体例や種々の計算を行うため,引き続き計算機を取り入れて研究を進めていく.具体例の計算から,非常に複雑な特異性を持った特異多様体が関係することがわかっており,その分類をはじめとして,個々の具体的な状況の研究も重要であるので,一般的な状況で結果が得られない場合には,具体的な状況について詳しく調べていく計画である. また,本研究は解析的ラドン変換の広大な理論に倣い位相的ラドン変換の理論を発展させることを目的としており,今後もこの方針で対称空間や一般の等質空間などさまざまな対象に対する試験的な考察を行っていく.そのためにも解析的ラドン変換に関する知見を得るべく研究交流を行っていく.平成25年度は最終年度であるので,これまで得られた結果をとりまとめ,その成果発表を積極的に行う計画である.そのために研究費を旅費として大いに活用し,本研究課題のさらなる発展性について国内外の研究者とディスカッションを行っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度も,引き続き平成23,24年度に得られた結果や知見について国内外の研究者とディスカッションを行いながら,位相的ラドン変換の理論についてさらなる発展を目指すために研究費を活用していく計画である.平成25年度は本研究課題の最終年度であるので,これまでに得られた結果をとりまとめ,成果の発表を積極的に行う計画である.主に,特異点理論,超局所解析理論,積分幾何をテーマとした国内外の研究集会やセミナー等に参加し,成果発表を行うための旅費に研究費を使用する.また,国内外の専門家を招聘し研究講演やセミナーを行ってもらうための謝金を含む費用としても研究費を活用していきたいと思っている.本研究では計算機を活用して具体例の計算や一般的性質の発見を行っており,状況に応じて計算機や計算用ソフトのバージョンアップのための費用としても研究費を活用させたい.
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