研究概要 |
本研究では,集合のオイラー数をその有限加法的測度とする積分論における代数的な背景をもつ構成可能関数の積分変換について研究している.平成23,24年度に,グラスマン多様体間の位相的ラドン変換の像の特徴付けに関する結果を得た.グラスマン多様体間の位相的ラドン変換像は,解析ラドン変換像が偏微分方程式系で特徴付けられるのに対して,グラスマン多様体とその核関数の性質から従う不変量を用いたある種の位相的積分方程式系によって特徴付けられる.すなわち,ラドン変換像はその位相的積分方程式系を満たし,さらにはある構成可能関数がその位相的積分方程式系を満たせば,その構成可能関数はラドン変換像として記述できる.しかも,すでに構成していたラドン変換の左逆変換がいわば右逆変換ともいえる対応を与える.平成25年度は,この結果の精密化に取り組んだ.これまで例の状況から一般化する方法をとっていたが,像を特徴づける位相的積分方程式の理論的な意味を考察し,証明を改良した. また,平成25年度は扱う関数を構成可能関数から一般の実数値をとる定義可能関数へと拡張し,そのオイラー数から定義される測度による積分論および積分変換についても研究を行った.積分変換に付随した良い三角形分割をもつ定義可能関数のクラスについて,位相的ラドン変換の左逆変換を構成し,反転公式を証明した. 本研究では,旗多様体における位相的ラドン変換の研究も行っており,これまで具体的な場合についていくつかの知見を得ていた.平成25年度はそれらの一般化を目標としていたが,現時点ではその課題について理論および計算上の困難からその解決には至っておらず,引き続き考察を続けていく.
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