研究概要 |
これまでに導出した日本酒醸造現象を記述する数理モデルに対して、いくつかの項に対して補正を施したモデルについて考察した。その中でも構造が単純な製麹過程(醸造の第1段階)に対応する部分に着目して解析を進めた。その結果、熱方程式には第3種境界条件、それ以外の方程式には斉次ノイマン境界条件を課した初期値境界値問題に対する解の存在性が得られたので、学術論文 "Mathematical model for the process of brewing Japanese sake and its analysis" (Adv. Math. Sci. Appl., Vol. 23, No. 1, pp. 297-317, (2013)) 及び、研究集会等における口頭発表にて発表を行った。本論文の結果によって導出した数理モデルの数学的可解性が保証され、解を調べることで現象の様子が表現できているか検証することが可能となった。 ここまでの研究により、数理モデルの全段階に対する解析について展望が開けた。いくらか調整が必要になる可能性はあるが、今回用いた解析手法とおよそ同等の方法によって全段階に対する解析が可能となることが期待される。さらに、解に対する制御問題や漸近挙動等を研究することで、モデルの現象再現性や未来予測に役立てられると期待できる。 加えて、仮似変分不等式の抽象論の枠組みから本問題の可解性について検討することができ、仮似変分不等式の抽象論が具体的な方程式系の解析に応用できることが明らかとなった。
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