昨年度までに行った日本酒醸造過程モデルに対する解析結果をもとにして、非線形発展方程式の抽象理論に関する研究を主として進めた。特に劣微分作用素によって生成される非線形発展方程式の可解性についての議論と、準劣微分作用素によって生成される抽象型仮似変分不等式の可解性についての研究を主題とした。結果として、どちらの方程式に対しても一定の条件下において解が存在することを証明することができた。このうち劣微分作用素によって生成される非線形発展方程式の可解性については学術論文"Solvability of nonlinear evolution equations generated by subdifferentials and perturbations"において発表した。 これに加え、日本酒醸造過程モデルの最適制御問題に関しての研究を進めた。現在研究対象としているモデルでは方程式を考える終了時間が未知関数自身に依存している。そのため単純に最小化列に対応する解を比較することができない。このこと等によって従来の最適制御問題に対する解析手法が適用できないことが明らかになった。 この最適制御問題をはじめとするいくつかの問題に対しては従来の解析手法が適用できないため、新たな解析手法の構築が求められる。この点については今後の課題となった。
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