本研究課題では、すばる望遠鏡用高コントラスト観測装置「SCExAO (Subaru Coronagraphic Extreme Adaptive Optics)」に、申請者が提案した8分割位相マスク「8OPM (Eight Octant Phase Mask)」を搭載することを目的とする。本目的のため、(1)Hバンド(1.6ミクロン波長帯)用8OPM 、(2)副鏡の影をもつ望遠鏡瞳像を円形開口像に変換する(副鏡の影を除去する)ための特殊補正レンズの開発を推進した。 H23年度は、上述の2つの光学コンポーネントの設計を行い、特に(2)については、申請時に提案していたよりもさらに高い性能を実現できる補正レンズの設計に成功した。また、実観測に向けて、大気揺らぎによる天体光波面の乱れを推定するためのコロナグラフ用波面センサの開発を行なった。特に、光波面乱れの中でもっともコロナグラフ性能に影響を与える、Tip-Tilt(傾き)成分を推定するためのアルゴリズム開発を行なった。 H24年度は、前年度に設計した光学コンポーネントの製作を行った。(1)については、フォトニック結晶技術を利用した8OPMを製作した。(2)については、低分散材質フッ化カルシウムによる補正レンズの製作を行った。製作した補正レンズの室内実証試験を実施し、副鏡の影が除去されることを確認した。コロナグラフ用波面センサでは、Tip-Tilt成分以外の収差成分を推定するためのアルゴリズム開発にも着手した。 これらの研究開発により、すばる望遠鏡SCExAOに8OPMを導入するための技術的見通しを得ることができた。
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