研究課題/領域番号 |
23740147
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
森井 幹雄 東京工業大学, 理工学研究科, グローバルCOE研究員 (90392810)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | X線天文学 |
研究概要 |
マグネターは超強磁場を持つ中性子星であり、磁場のエネルギーを解放しながら光るパルサーの一種である。その磁場のエネルギーの解放メカニズムは良くわかっていないが、突発的に明るさが変動することが知られている。可視・赤外対応天体が見付かっており、磁気圏起源とダスト円盤起源の二つの可能性が考えられている。マグネターの赤外対応天体について、最も明るい 4U 0142+61 のAKARI衛星による観測データの解析を行ったところ、有意に変動し、減光していたことが判明した。赤外バンドにおいて変動が観測されたのは今回が初めてである。これは、マグネター磁気圏の変動によると考えることもできるが、ダスト円盤がマグネターのフレアによって、昇華したと考えることもでき興味深い。さらに、別のマグネター 1E 2250+586の観測も行っており、この天体についても初の赤外変動の検出を狙うことができる。2010年9月にカニ星雲は、ガンマ線フレアを起した。これは全く予想外な出来事で、星雲成分が変動したのか、パルス成分が変動したのかX線の観測により検証することが必要であった。全天X線監視装置 MAXIは、常に全天のX線天体を監視するため、この検証が可能であった。さらに、時間分解能も良いため、パルス成分の変動を調べることも可能であった。ここでは、マグネターのパルス解析を行うために整備したソフトウェアを用いた。そして、パルス成分、星雲成分のどちらも変動が無いことを示すことができた。2011年11月には、新種の天体 MAXI J0158-744 のフレアを捉えた。これは極めて速い減光をする新星の一種であると考えられる。連星系進化の理論モデルに影響を与える可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マグネターの赤外観測により、赤外変動を初めて検出した意義は大きい。変動した際のスペクトルを取得すれば、ダスト円盤モデルが正しいか否かを決定することができる。この変動はX線でのフレアに伴って発生した可能性があり、MAXIによる抜けのない定常観測が最も重要であった。MAXIの観測データから、新たなマグネターを検出するために、パルス検出のためのソフトウェアの整備を行った。カニ星雲で全く予想外な変動が捉えられたので、このソフトウェアを用いた解析を行い、パルス成分に変動が無いことを示した。カニ星雲の変動は星雲成分によるものであることを示唆する結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
マグネターの赤外観測の追跡観測を行い、変動がダスト円盤の消失によると解釈可能かどうかを調べる。そのため、すばる望遠鏡を用いた観測提案を行っていく。MAXIの観測データから、新たなマグネターを検出するためのソフトウェアの整備を行い、これを東工大が所有するスーパーコンピュータ「TSUBAME」に移植する。全天を約4万箇所に分割し、それぞれにおいて、時系列解析を行い新たなマグネターを検出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
東工大が所有するスーパーコンピュータ「TSUBAME」の利用料。スーパーコンピュータ「TSUBAME」でGPU を用いた時系列解析を行うための準備段階として、自前のパソコンにGPU を塔載してソフトウェアの開発を行う。そのために、GPUが塔載できる高性能パソコンを購入する。
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