研究課題/領域番号 |
23740149
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鳥居 和史 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (20444383)
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キーワード | 国際研究者交流 アメリカ / 電波天文学 / 銀河系中心部 / 星間物質 / 磁場 |
研究概要 |
本研究は銀河系中心部の広域分子雲観測を実施し、銀河系中心部の磁気浮上ループの全容の解明を目指すものである。 本年度はNANTEN2望遠鏡を用いたCO J=1-0輝線による銀河系中心部の広域2kpcの観測を実施し、これを完了した。観測には12COの同位体である13COも同時に行い、より高密度なガスの分布を明らかにした。今回観測されたCO J=1–0およびNANTEN2で得られたCO J=2-1輝線データを用い、Spitzer衛星により明らかにされた赤外線フィラメントとの比較研究を実施し、これらが磁気浮上ループであることを指摘した。この結果は日本天文学会2012年秋季年会および同2013年春季年会にて発表した。 また、前年度に発見した銀河系中心部のDouble Helix Nebula (DHN)に付随する分子雲に対し、近赤外線を用いた減光の解析を実施し、DHNが銀河系中心部に位置することを初めて明らかにした。これによりDHNの起源が銀河系中心部の巨大ブラックホールSgr A*にあることを示した。この結果は現在Astrophysical journal誌に論文投稿中である。また、CSO望遠鏡およびMopra望遠鏡により得られたDHNに付随する分子雲に対する高分解能CO分子データを用いた速度解析から、この分子雲の詳細な速度分布を明らかにし、また分子雲の温度が絶対温度30K以上と典型的な分子雲の温度10Kより高いことを示した。これはDHNの磁場活動による加熱を示唆する結果である。 また、銀河系中心部の磁場強度を世界で始めて直接観測により明らかにするため、アメリカのEVLA干渉計を用いたOH分子の吸収線による偏光観測を提案し、受理された。現在この観測を進めており2013年5月までに完了の見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、1)NANTEN2による銀河系中心部広域に対するCO(J=1-0)の詳細観測、2)NANTEN2による銀河系中心部広域に対するCO(J=2-1)の詳細観測、3)磁気浮上ループの3次元分布の解明、4)銀河系中心部の磁場強度の直接測定の4点を計画している。 1)に関しては本年度完了し、2)は来年度の実施に向け受信機装置の開発が完了した。来年度中に残る観測を完了する予定であり、順調と言える。またすでに得られたデータからも査読論文として1本を投稿中、1本を投稿準備中である。3)は研究を行うためのデータの基礎解析をすでに完了している。4)の観測は観測提案がEVLA干渉計により受理され、現在観測中である。以上から本研究はおおむね計画どおりに進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はNANTEN2望遠鏡に新たに開発した200GHzを搭載し、銀河系中心部の広域サーベイを完了させる予定である。望遠鏡は順調に稼働しており、開発された受信機も実験室では要求性能を達成しており、実現の公算は高い。この観測を実施すると共に、すでに得られたデータに対する科学解析を実施し、これを論文として投稿する。また、本年度までで銀河系中心部2kpc全域のCO J=1-0輝線の観測が完了した。これを用いて銀経正方向の分子雲ループの同定を進めることを予定している。また、EVLAで実施中の銀河系中心部の磁場測定が完了しだい、これの解析および論文執筆を実施する。以上の研究においてカリフォルニア大学のMark Morris教授および千葉大学の松元亮治教授と密に議論を行い、観測結果の解釈を十分に行う。これらを通し本研究を完了させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度は主に観測および研究打ち合わせ、学会参加に対する旅費として使用する。観測はNANTEN2望遠鏡を予定している。研究打ち合わせは九州大学の町田真美助教、千葉大学の松元亮治教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMark Morris教授を予定している。また論文の投稿費用としても使用する。加えて物品として新たな解析用ノート型計算機の購入と、その他として解析用ソフトウェアIDLのライセンスの更新を行う。
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