研究課題
昨年度に引き続き、すばる望遠鏡用近赤外線カメラ(HiCIAO)を用いて、原始惑星系円盤の高解像度撮像観測を行った。これらの観測時にシステム全体の光量を測定するための測光分光観測を行えるよう、海外研究者の協力を得て小中口径望遠鏡の時間を確保し、連携観測を実現した。また、高解像度撮像の対象となった天体について、過去の変光を探るためのアーカイブデータ、文献収集を進めた。ISAS望遠鏡を用いて、原始惑星系円盤を持つ15天体(Tタウリ型星 14天体、Herbig Ae型星 1天体)に対して、V, R, I バンドで測光モニター観測を行った。平成24年10月9日~平成25年2月6日の合計 42夜のうち、悪天候の 7夜を除く 35夜でデータを取得した。「時」スケールの変動の有無を確認するために、約半数のサンプルについては、晴天時、同一夜に2度の観測を行った。サンプルの等級は視野内の比較星との相対測光によって求め、0.05 等級未満の高い測光精度を得た。観測天体の中で AA Tauri は注目すべき変光を示した。AA TauriはTタウリ型星変光のプロトタイプ星の一つである。しかし、我々の観測の結果、先行研究で報告されている8.2日周期の変光に加えて、過去約17年間のデータに出現していない、深い減光が検出された。また、最も暗い時期に天体の色が赤化から青化に転じるというUX Ori型変光の特徴も見られた。10年以上の時間スケールを持つ変動は、円盤内縁における熱不安定性、もしくは星から 6 AU 以遠の円盤構造の不均一性を示唆する。国内の赤外線、電波研究者と、時間変動現象の観測に関する研究協力を行った。
3: やや遅れている
すばるによる円盤観測、また、国内・海外研究者の協力のもとでの複数望遠鏡を使った連携観測は、概ね順調に実現できている。ただし、データ量が多く解析が遅れているため、来年度はデータ解析の人員を増やす予定である。
時間変動の性質を明らかにするという研究の性質上、重要なのは観測の継続である。これまでの我々の研究から、円盤構造の変動のタイムスケールとして長くて数年が予想されるため、平成25年度も23、24年度の計画を継続する。観測された変光の特徴(明るさの変動の度合いや周期、内側と外側との相関、星自身の変光との相関)に基づいて、円盤構造の変動のメカニズムを明らかにするために、時間変動を予言する理論研究との比較を、理論研究者を交えて行う。
研究計画に大きな変更は無い。観測で取得したデータ量が膨大になっているため、ハードディスクの購入は必須である。
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The Astrophysical Journal
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