研究課題/領域番号 |
23740154
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
井上 剛志 青山学院大学, 理工学部, 助教 (90531294)
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キーワード | 星形成 / 惑星形成 / 衝撃波 / 磁気流体力学 / 超音速乱流 |
研究概要 |
分子雲形成の大規模3次元磁気流体力学シミュレーションを実行し、分子雲の形成過程の詳細や形成された分子雲内部の構造、星形成機構に関する成果を得た。実行したシミュレーションの数値計算コードは前年度までに開発および改良したものであり、分子雲形成に必要な化学進化、輻射輸送、加熱冷却、熱伝導の効果を取り入れた磁気流体力学方程式を有限体積法で解くものである。シミュレーション実行の結果、以下の極めて興味深い結果を得た。1) 従来の常識とは異なり、分子雲は通常の観測では検知されない暖かい熱的不安定ガスの乱流がエネルギーを支配している。これは分子雲の低星形成率性を説明する上で極めて重要である。2) 分子雲内部で形成されるクランプは特定の統計的性質を保ちながら星形成コアへと進化する。これは典型的な星形成の初期条件が存在することを示し、今後の星形成および惑星形成分野に対して強いインパクトを与えると予想される。これらの研究成果を論文としてまとめ、査読付きの欧文誌である The Astrophysical Journal に掲載した。また、3つの国際会議でこの研究成果の発表を行い、さらに本研究の進展に直結する近接領域のシミュレーション技法の開発や基礎物理過程、観測に関する査読付き欧文論文を6本出版することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最大の目標である星形成の初期条件解明に対して極めて重要な結論を得ることができた。また、その成果を論文にまとめて発表し、国際会議での周知活動も効果的に行うことができた。今年度の成果で得た基本シナリオは自己重力も含めた今後のシミュレーションにたいする指針や、解析モデル構築の指針にもなり引き続き行う研究に対しても極めて重要な成果となった。さらに本研究の進展に直結する近接領域のシミュレーション技法の開発や基礎物理過程、観測に関する査読付き欧文論文を6本出版することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果で得た結論をさらに強固なものにするために自己重力を考慮した同様のシミュレーションを引き続き行う。そのよう計算に成功すればほぼ完全な星形成の初期条件を世界で初めて得ることができる。さらに、その結果を元にして分子雲コアの自己重力崩壊シミュレーションを行い、これまでに仮定されてきた初期条件での結果と比較して星、惑星形成がどのように異なるのかについての探求を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記シミュレーションの実行には大規模なスーパーコンピュータが必要となるが、理化学研究所の京コンピュータや国立天文台の大規模並列計算機XC30を無償利用できるユーザーに選抜されており、計算機の利用料は発生しない。必要となるのは得られたデータの解析プログラム利用料や、データ保存のハードディスクであり、それらのライセンス料や購入料金として研究費を使用する。また、国際会議、学会への参加旅費や約2本分の論文出版費が必要となる。特に1件の招待講演を含む2件の国際会議での発表がすでに確定している。
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