研究課題
本研究は、早稲田大学那須観測所における広域掃天観測により高銀緯に位置する突発的な電波現象を検出し、その情報を外部発信することを目的としている。本年度は2012年度までに構築した解析手法を用いて、観測データの解析を行った。観測データは、那須観測所の20m鏡8機を4組の2素子干渉計として使用し、掃天観測を行った約170日間のデータである。20m境の観測領域である赤緯32 - 42度を0.5度間隔で観測した。掃天観測を行うため、1日24時間で1つの赤緯を全て観測することが可能であるが、昼間は太陽の影響を受ける。従って、観測時期を約半年ずらし、同じ赤緯を少なくても2度観測する必要性がある。これらの観測から観測領域におけるテンプレートデータ(積分データによる)の準備が整った。テンプレートデータには、信号対雑音比が9以上で検出された電波源由来のフリンジが約680個含まれていた(銀河面は除く)。NVSSカタログにおいて500mJy以上の電波源が位置する領域では、87%からフリンジが検出された。この結果は、2010年に20m境観測システムに導入されたFFTプロセッサの性能を生の観測結果から示した。先の検出率は、FFTプロセッサ導入前の1000mJy以上の検出率と同等である。本研究のターゲットである突発現象と共に、定常的な電波源の強度変動についても広域観測の強みを生かせる観測結果である。定常的な電波源の精密な強度評価は、2013年度に新たに確立された(Tanaka et al. 2013)。本研究では、2011年度冬から発生した外部由来の人工電波の混信対策やデータ上でのクリーンアルゴリズムが未完であり、全ての解析過程を自動化することが問題点として残った。しかし、解析過程の確立、突発信号の信頼性を明確化する方法や強度変動の評価法が確立されたことにより、解析の信頼度と即応性について向上を遂げた。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
The Astrophysical Journal
巻: Volume 781、issue 1、id10 ページ: 12
10.1088/0004-637X/781/1/10
Publications of the Astronomical Society of the Pacific
巻: 125, Issue 927 ページ: 557-564