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2011 年度 実施状況報告書

超新星爆発・ガンマ線バーストの輻射流体計算と遠方宇宙・初期宇宙観測への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23740157
研究機関甲南大学

研究代表者

冨永 望  甲南大学, 理工学部, 講師 (00550279)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2015-03-31
キーワード超新星爆発 / ガンマ線バースト / 元素合成 / 第一世代星 / 非球対称爆発 / 可視光・赤外線観測
研究概要

本研究課題では、超新星爆発・ガンマ線バーストの輻射流体計算コードを開発し遠方宇宙・初期宇宙観測への応用することを目的として研究活動を行っている。本年度は特に以下のような研究を行った。1.炭素過剰クエーサー吸収線系の起源の解明: 2010年にクエーサー吸収線系の組成の観測で、通常と異なり炭素過剰を示すクエーサー吸収線系が観測され、金属欠乏星の元素組成と関係が指摘された。本研究により、炭素過剰は暗い超新星爆発によるものとして説明可能であり、そのほかの元素組成も説明できることを示した。これにより、遠方宇宙でも近傍と同様に暗い超新星爆発が発生し、それによる重元素汚染が起こっていることを示した。2.激しい質量放出を経験した赤色巨星の超新星爆発: 近年、赤色巨星のまま超新星爆発を起こす星の質量には上限があることが提案されており、それを説明するために激しい質量放出が起こるという提案がなされている。本研究では、そのような激しい質量放出を経験した赤色巨星の光度曲線は通常のII-P型超新星爆発ではなく、非常に青く明るくなることを示した。また、その光度曲線は超新星爆発2009kfの光度曲線を説明できることを示した。3.非定常質量放出による非常に明るい超新星爆発の分散の説明: 近年、星の進化段階で非定常な質量放出が提案されている。本研究では、非定常な質量放出の違いによって、非常に明るい超新星爆発に細いスペクトル線が見えるかどうかという違いを説明できることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画通り、光子輸送計算については研究協力者の柴田三四郎氏(甲南大学大学院修士2年)が開発を進めている。その結果は修士論文としてまとめられており、コンプトン散乱を考慮した光子輸送計算コードの開発はすでに終わり、現在は特殊相対論的多次元流体計算を用いて計算した流体の密度温度分布の元での光子輸送計算を行っている。その結果はすでに研究会における研究発表を行える程度の結果が出ており、今後はその内容に関して投稿論文をまとめる予定である。光子輸送計算と同時に進める予定である相対論的多次元輻射輸送計算についても現在定式化を進めている。そちらは、実験室系での2次元極座標における輻射輸送方程式を求め、それを共動系に変換するところまで終了している。このように、光子輸送計算はすでに結果が出ており、輻射輸送計算については開発を開始しており、研究計画通りの進捗状況となっている。

今後の研究の推進方策

平成23年度に引き続き光子輸送計算コードを用いた相対論的流体中での輻射輸送計算を行い、平成24年度は光子輸送計算コードの計算結果について論文化を進める。また、それと同時に特殊相対論的多次元輻射輸送計算コードの開発を押し進める。特殊相対論的多次元輻射輸送計算については、平成24年度はコード開発を集中して行う予定であり、数値計算コードのテスト計算は甲南大学PCクラスタにおいて行う。また、その際、研究協力者であるSergei Blinnikov氏(理論実験物理学研究所[ロシア]/東京大学数物連携宇宙研究機構)、須佐元氏(甲南大学)から専門知識の提供を受け、将来的な多波長化、金属による吸収などの素過程導入において必要な要素を取り入れる予定である。その後、並列化のうえ、国立天文台、筑波大学の共同利用計算機の使用を予定している。

次年度の研究費の使用計画

本研究で使用している国立天文台・天文シミュレーションプロジェクト・汎用PCシステムおよび甲南大学・理論研究室PCクラスタが、平成23年度に本研究に支障のない程度まで増強されたため、平成23年度に予定していた計算機、ハードディスク購入を行わなかった。しかしながら、論文化にあたり計算結果の量が膨大になることが想定されるためハードディスク購入を予定している。また、同時に特殊相対論的多次元輻射輸送計算も行う必要があるため、計算機購入についても予定している。研究協力者の柴田三四郎氏による光子輸送計算コードの開発が予想以上に早く進行しているため、その結果に基づき私および柴田三四郎氏が多数の研究会に参加する予定であり、その成果発表のための旅費を謝金として支払う予定である。さらに本研究では計算結果と観測研究との比較を行うが、われわれの計算結果との比較に適した観測データを得るために、私および研究協力者の森健彰氏(甲南大学学部4年)が東京大学木曽観測所105cmシュミット望遠鏡を用いた超新星爆発の観測に参加する予定であり、そのための旅費としても使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Diversity of Luminous Supernovae from Non-steady Mass Loss2012

    • 著者名/発表者名
      Moriya, Takashi J.,Tominaga, Nozomu
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 747 ページ: 118

    • DOI

      10.1088/0004-637X/747/2/118

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chemical Enrichment in the Carbon-enhanced Damped Lyα System by Population III Supernovae2011

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi, Chiaki, Tominaga, Nozomu, Nomoto, Ken'ichi
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal Letters

      巻: 730 ページ: L14

    • DOI

      10.1088/2041-8205/730/2/L14

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Supernovae from red supergiants with extensive mass loss2011

    • 著者名/発表者名
      Moriya, Takashi, Tominaga, Nozomu, Blinnikov, Sergei I., Baklanov, Petr V., Sorokina, Elena I.
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 415 ページ: 199-213

    • DOI

      10.1111/j.1365-2966.2011.18689.x

    • 査読あり
  • [学会発表] Shock Breakout of Type II Plateau Supernova2012

    • 著者名/発表者名
      Tominaga, Nozomu
    • 学会等名
      IAU Symposium 279
    • 発表場所
      Nikko, Japan
    • 年月日
      2012 – 312
  • [備考]

    • URL

      http://tpweb2.phys.konan-u.ac.jp/~tominaga/

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公開日: 2013-07-10  

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