研究課題/領域番号 |
23740157
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
冨永 望 甲南大学, 理工学部, 准教授 (00550279)
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キーワード | 超新星爆発 / ガンマ線バースト / 元素合成 / 第一世代星 / 非球対称爆発 / 可視光・赤外線観測 |
研究概要 |
本研究課題では、超新星爆発・ガンマ線バーストの輻射流体計算コードを開発し遠方宇宙・初期宇宙観測へ応用することを目的として研究活動を行っている。本年度は特に以下のような研究を行った。 1. 非常に明るい超新星爆発2006gyの起源: 多波長輻射流体計算を用いて、非常に明るかった超新星爆発 2006gy の多色光度曲線を再現し、その起源が非常に濃い星周物質と超新星爆発放出物質の衝突であることを明らかにした。 2. モンテカルロ計算を用いたガンマ線バーストからの熱的放射: 近年、ガンマ線バーストの即時放射において、熱的放射の重要性が注目を浴びている。逆コンプトン放射による光子のエネルギー変化を考慮に入れたモンテカルロ計算コードを開発した。開発したコードと既に開発している特殊相対論的流体計算コードを組み合わせて、大質量星中心部で形成された相対論的ジェットが親星を突き抜け、そこから放射された熱的光子がどのように観測されるかについて明らかにした。 3. 宇宙初期の超巨大質量星のガンマ線バースト:宇宙初期には太陽の500倍を超えるような超巨大質量星が形成され、その星は非常に明るいガンマ線バーストを引き起こすと提案されている。そこで、そのような爆発における元素合成計算を行い、超巨大質量星のガンマ線バーストが宇宙の化学進化に寄与するほどの数が起こってはいけないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画通り、光子輸送計算については研究協力者の柴田三四郎氏(甲南大学大学院博士1年)が開発を進めている。コンプトン散乱を考慮した光子輸送計算コードの開発はすでに終わり、現在は特殊相対論的多次元流体計算を用いて計算した流体の密度温度分布の元での光子輸送計算を行い、すでに研究会における研究発表を行っている。しかしながら論文化にあたりテスト計算を行っており、当初予定より若干の遅れがみられる。光子輸送計算と同時に進める予定であった相対論的多次元輻射輸送計算については、若干の遅れが見られるものの定式化が終わり実際に計算コードの開発を進めている。計算コード開発にあたっては、研究協力者であるSergei Blinnikov氏(理論実験物理学研究所[ロシア]/東京大学数物連携宇宙研究機構)の助言の下、球面調和関数を用いて光子の散乱を解き離散座標を用いて光子輸送を計算するSpherical Harmonic Discrete Ordinate Method (SHDOM)という手法を採用することに決定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続き光子輸送計算コードを用いた相対論的流体中での輻射輸送計算を行い、その計算結果について論文化を進める。また、それと同時に特殊相対論的多次元輻射輸送計算コードの開発を押し進める。採用することの決定したSpherical Harmonic Discrete Ordinate Method (SHDOM)という手法は太陽光の輻射輸送計算や地球大気中の輻射輸送計算に使用されており、相対論的多次元輻射輸送計算への応用は行われたことがないため、開発した数値計算コードにはテスト計算が必要と考えられる。テスト計算では甲南大学PCクラスタにおいて行う。また、その際、研究協力者である須佐元氏(甲南大学)から専門知識の提供を受け、将来的な多波長化、金属による吸収などの素過程導入において必要な要素を取り入れる予定である。その後、並列化のうえ、国立天文台、筑波大学の共同利用計算機の使用を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画より研究成果の論文化、コード開発に若干の遅れがみられるため、計算結果の量が膨大になることが想定されるため予定していたハードディスク購入、および論文投稿料、またテスト計算用の計算機購入が不要となった。しかしながら、これらの支出は平成25年度以降に必要となることが予定されている。さらに本研究では計算結果と観測研究との比較を行うが、われわれの計算結果との比較に適した観測データを得るために、私および研究協力者の松本恵未子氏(甲南大学大学院修士1年)、今村衣里氏(甲南大学学部4年)が東京大学木曽観測所105cmシュミット望遠鏡を用いた超新星爆発の観測に参加する予定であり、そのための旅費としても使用する予定である。
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