研究課題/領域番号 |
23740160
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関口 雄一郎 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (50531779)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 理論天文学 / ガンマ線バースト |
研究概要 |
平成23年度の研究では、高いエントロピーを有する大質量星中心核の重力崩壊がガンマ線バーストを起こすという仮説の下、当初の計画のとおり、エントロピーが一様な近似的な中心核モデルを採用し、重力崩壊で重要となる微視的物理過程を組み入れた一般相対論的数値流体シミュレーションを行い、重力崩壊のダイナミクス、崩壊の結果形成されるブラックホール及びブラックホール周りの降着円盤の構造を理論的に調べた。採用した中心核の質量が十分重いため、中心核は直ちにブラックホールへと重力崩壊し、ブラックホールの周囲に降着円盤が形成されるが、その形成過程は中心核の初期角運動量に強く依存することが明かとなった。さらに、ブラックホール形成後の時空の長時間発展をに世界で初めて成功し、降着円盤は従来考えられていたような静的なものではなく、衝撃波の発生、対流などの流体不安定を伴う極めて動的なものであることを初めて明かにした。衝撃波における効率的な運動エネルギー散逸はガンマ線バーストの示す高いエネルギーを、また、流体不安定に伴って質量降着率及びニュートリノ光度が示す激しい時間変動は、ガンマ線バーストの示す時間変動をそれぞれ説明し得るものである。ガンマ線バーストを起こす動力源として、ニュートリノ対生成及びブランドフォード・ズニャック過程が有力視されているが、従来の研究結果が後者を支持するのに対し、本研究結果は前者でも十分なエネルギーが生成可能であることを示唆する。これは中心核のエントロピーが高いことに起因するものである。さらに、当初の研究計画を越えて、平成24年度の研究計画である、理論的な恒星進化計算基づく大質量星中心核を用いた重力崩壊計算、平成25年度の研究計画である一般相対論的輻射輸送コードの作成にも着手し、大きな成果をあげている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の研究では、当初の計画を完遂するのにとどまらず、下記に示すように、複数の発展的研究を行うことができたため。(1)長時間ブラックホール時空を安定に発展可能な方法の確立により、降着円盤の長期進化についても明かにすることができた。(2)各共同利用研究機関の大型計算機を積極的に利用することにより、平成24年度の計画である、理論的な恒星進化計算基づく大質量星中心核を用いた重力崩壊計算を一部行うことができた。(3)汎用計算機の予想以上の高速化に伴い、平成25年度の研究計画で作成予定であった一般相対論的輻射輸送コードも部分的に完成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究結果で明かとなったのは、ブラックホール・降着円盤系の形成過程及びその進化が、中心核の初期角運動量に想像していた以上に強く依存するということである。そのため、平成24年度の研究では、当初の予定よりも多数の角運動量分布に対してシミュレーションを遂行する必要がある。また、理論的な恒星進化計算基づく大質量星中心核を用いた場合には、ブラックホールが形成されるまでに想定していたよりも長時間を要することが明かとなった。つまり1つのモデルを計算するのにより多くの時間がかかる。上記の問題を解決するために、平成24年度の研究では、シミュレーションの実行とともに、作成した数値コードの更なる高速化を推し進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた状況は以下のとおりである。(1)平成23年度の研究が順調に進展した。(2)平成23年度に予定されていた高性能CPUの販売が平成24年度に延期になった。(3)上記に述べたように、平成24年度の研究では予定よりも多数かつ長時間のシミュレーションの実行が必要になると見込まれるようになった。平成24年度に発売予定の、高性能CPUを搭載した(より高額)のワークステーションを購入するのに次年度使用額を充てる。
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