研究課題/領域番号 |
23740160
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関口 雄一郎 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定研究員 (50531779)
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キーワード | 宇宙物理 / 理論天文学 / ガンマ線バースト / 数値相対論 |
研究概要 |
平成24年度の研究では、平成23年度に引き続き、高いエントロピーを持ち高速回転する恒星中心核の重力崩壊の2次元軸対称の数値相対論シミュレーションを行い、重力崩壊の結果、ブラックホールと降着円盤が形成される過程の詳細について明らかにした。前年度の研究では、初期条件として恒星中心核の近似モデルを採用していたが、本年度の研究では、恒星進化理論に基づく現実的な中心核モデルとして、梅田(東京大学)らによる金属欠亡星中心核、及び大久保らによる初代星中心核を採用した点が大きな違いである。 梅田らのモデルの場合、中心核質量がそれほど大きくないため、はじめに大質量中性子星が形成され、中性子星表面で衝撃波が生成され伝播する。高速回転のために衝撃波はトーラス状に歪み、外層から降着する流体は、いわゆる斜め衝撃波を経て中性子星の極付近に集約され、そこで激しい衝撃波が発生する。その結果、衝撃波加熱により過熱状態となり、最終的にアウトフローが形成されるというこれまでに知られていなかった現象が明らかになった。最終的に中性子星はブラックホールへと重力崩壊し、ブラックホールの周りにトーラスが形成される。トーラスでは対流やケルビンヘルムホルツ不安定などの流体不安定が駆動され、システムは極めて動的なものであることが明らかとなった。このように、ブラックホールの形成過程は、従来考えられていたよりも激しい時間変動を伴う動的なものであることを、現実的な問題設定の下で初めて明らかにした。衝撃波における効率的な運動エネルギー散逸はガンマ線バーストの示す高いエネルギーを、また、流体不安定に伴って質量降着率及びニュートリノ光度が示す激しい時間変動は、ガンマ線バーストの示す時間変動をそれぞれ説明し得るものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の研究では、ブラックホール形成過程を想定していた以上の長時間にわたって追跡することができた。これはブラックホール内部に発生する、数値的に取り扱いの難しい特異点の取り扱いについて、前年度以上の改善が達成されたためである。その結果、従来は想定されていなかった様々な動的現象がブラックホール形成に付随することを明らかにすることができた。 また、金属欠乏星の中心核に加えて、初代星中心核を採用してシミュレーションを行うこともできた。 さらに、平成25年度の課題である、一般相対論的輻射輸送コードを完成させることができた。これは数値相対論の研究分野において極めて大きなブレイクスルーであり、平成25年度はこのコードを用いて効率的に研究を進めることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度、平成24年度の研究結果で明かとなったのは、ブラックホールと降着円盤からなる系の形成過程、及びその進化が、中心核に初期に加える角運動量に極めて強く依存するということである。中心核における角運動量については全くわかっていないため、理想的には、様々な角運動量分布に対して多数のシミュレーションを遂行する必要があるが、一般相対論的輻射輸送までを考慮したシミュレーションの実行には長時間を要する。 上記の問題を解決するために、平成24年度の研究では、シミュレーションの実行とともに、作成した数値コードの更なる高速化を推し進めてきたが、様々な角運動量分布に対して多数のシミュレーションを可能とするまでにはいたっていない。そこで、平成23年度、平成23・24年度の研究結果から、ガンマ線バーストを起こし得るようなブラックホール降着円盤系が形成される場合に注目し、それらに対して少数の一般相対論的輻射流体シミュレーションを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた状況は以下のとおりである。 (1)平成24年度の研究が順調に進展した。 (2)共同利用研究機関の大型計算機の資源割り当て等に恵まれ、ワークステーション購入する必要が無かった。 平成25年度は研究計画の最終年度であるため、次年度仕様額は、研究会における研究成果の発信に用いたい。
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