平成25年度の研究では、平成24年度に作成したニュートリノ輻射輸送と一般相対論的流体を結合して解くための数値相対論コードのプロトタイプをもとに、大型計算機で実行可能を視野に入れた最適化を施したコードを完成させた。また、効率的に計算を遂行できるように、物理的状況に応じて輻射輸送の取扱いを変えたコードも作成した。これにより、効率的な研究遂行が可能となった。完成させたコードを用いたシミュレーションが現在進行中であり、近い将来に結果をまとめて論文として発表する予定である。 さらに、大質量星の重力崩壊だけではなく、連星中性子星の合体シミュレーションにも適用可能なコードへの拡張にも成功した。本コードは、ショートガンマ線バーストの起源を探る研究において極めて重要となる。 これら一般相対論的輻射流体コードの作成とは別に、平成24年度までの研究が順調に遂行できたこともあり、本年度はショートガンマ線バーストの動力源候補である連星中性子星合体に関する研究を行った。主要な成果として、重元素の起源に関する新説の提唱があげられる。鉄族より重い重元素の起源は未解明であるが、その一つの候補が連星中性子星の合体である。従来の研究では、一般相対論、ニュートリノ、核物質状態方程式の取扱いが不十分であったため、連星合体では重元素の起源を説明することが難しいとされていた。しかし、これらの物理を包括的に組み入れた本研究は従来とは異なるシナリオを提唱する。すなわち、比較的柔らかい状態方程式の場合には、連星の合体時に衝撃波加熱によって温度が上昇するため、陽電子が生成され、陽電子を捕獲するニュートリノ生成反応によって、電子モル分率が上昇するため、太陽組成と符合する重元素パターンが得られることが明らかとなった。本研究は論文にまとめて現在投稿中である。
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