研究概要 |
本年度は、多数のビーム結合・干渉させて高コントラスト像再生を行うための、18ビーム結合光集積回路の概念設計を行った。設計は、以下の2点に留意して行った。1)全てのビームの相関を取るのではなく、ある程度相関数を絞ることによって、高感度と高コントラストを両立する。2)干渉縞の位相と振幅を測定するために、これまでは位相シフターによる4点サンプリング(0,90,180,270度)を行っていたが、ビーム分岐数が多くなり、効率が悪くなるという問題があった。この問題を、ビームを3分岐させることで0,120,240度の3位相で干渉縞を測定する、新しい3分岐位相シフターを用いることで解決する。このような設計方針を元に、以下のような回路設計解を得た。1)シングルモードファイバーから入力された18のビームをそれぞれ3分岐させる。2)分岐させたビームを、他のファイバーからのビームとYカプラーによって結合する。3)結合したビームを、3分岐位相シフターに通すことで異なる位相を持った3つのビームに分岐させる。これにより、3位相での干渉縞測定を可能にする。4)最終出力ビーム数は81となり、非常にコンパクトな回路となる。相関数を減らし新しい3分岐位相シフターを用いることで、光の効率的な利用を行うと共に、導波路同士の交差数が減るため、電場の意図しない漏れだしを防ぐことができる。また、新しい3分岐位相シフターは、入力した2つのビームを結合し、0,120,240度の位相を持った3つのビームに分岐させるものであるが、このような導波路の設計解が存在することを、計算により示した。以上の回路概念設計を元に、NTTエレクトロニクス社に製造の実現性検討を依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
23年度において、18ビーム結合光集積回路の概念設計は終了している。一方、新しい3分岐位相シフターの概念設計を行い、この素子の実現可能性検討を、NTTエレクトロニクス社に依頼したが、これまでに開発実績のない素子であるために、検討に時間を要している。 また、既に開発済みの8ビーム結合光集積回路を、Lick 3メートル望遠鏡用高コントラスト観測装置(Fiber Imager foR a Single Telescope,FIRST, SETI InstituteのFranck Marchisらが主導)に組み込み、On-sky testを行う予定であったが、現在可視光検出器のみ利用可能であり、8ビーム結合光集積回路が使用する近赤外線での利用が難しい状況にある。
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