研究課題/領域番号 |
23740165
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
北野 龍一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50543451)
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キーワード | 素粒子論 |
研究概要 |
LHC実験におけるヒッグス粒子の発見、および、新粒子の探索結果は標準模型を超える理論を考察する上での大きなヒントとなっている。特に、ヒッグス粒子の質量125GeVは、ヒッグス粒子の起源や相互作用に関して重要なヒントである。 本年度の研究では、ヒッグス場による電弱対称性の破れとQCDにおける閉じ込め、およびカイラル対称性の自発的破れの類似性に着目し、ヒッグス場の背後には、何かしらの強結合理論が隠れている可能性に関する理論的研究を行った。特に、高い超対称性(N=2)を持つゲージ理論の厳密解、サイバーグ・ウィッテン曲線を用いた考察から、現実のQCDにおける閉じ込めやカイラル対称性の破れが、双対ゲージ理論におけるカラー自由度とフレーバー自由度のロッキング現象で説明できる可能性について指摘した。この研究を応用して、ヒッグス場の起源に迫る可能性についても考察し、国際研究会などで発表した。 また、超対称模型において、初期宇宙で超重力子が熱的に生成される過程について、詳細な計算を行った。これまでに重要視されていなかった、メッセンジャー場の寄与や超対称性の破れに付随する擬モジュライ粒子の崩壊過程などを考慮すると、宇宙の再加熱温度が高くできる可能性を指摘し、これにより、熱的に宇宙のバリオン数生成が可能であることも示した。最新のLHC実験結果を考慮することにより、前年度の研究をより現実的なものに進展させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
サイバーグ・ウィッテン曲線を用いた解析など、いままでの研究の枠を超えた研究を行うことができた。また、超重力子の熱的生成の計算をアップデートし、多くの文献に見られる混乱を整理できた。これらの業績は予想を大きく超えたものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、電弱対称性の破れに関して、宇宙論との整合性を視野にいれて様々な可能性を追求していく。暗黒物質の正体とヒッグス粒子の起源に関連がある可能性についても研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は研究成果の発表よりも、様々な可能性の精査を優先した。そのため、研究成果の発表による旅費が次年度使用の予定となった。 研究成果の発表のための旅費として使用する。特に、国際研究会での発表を予定している。
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