1. 昨年度までの研究により、12C、16Oの励起状態でαクラスターがガス的に配位し量子凝縮した状態の存在が明らかになっている。このガス状態にΛ粒子がくっついた場合の構造変化を、9ΛBe、13ΛCにおいて2α+Λ及び3α+Λ構造を記述するα凝縮型の微視的クラスター模型波動関数を導入し議論した。特に13ΛCの励起状態では、Λ粒子により空間収縮したαガス状態の存在を予言した。また3α直線鎖構造状態が12Cの場合に比べ、よりはっきりと現れることを示した。 2. 20Neにおいて、5.79MeVの1-状態をバンドヘッドとする負パリティ状態は、パリティを破る空間局在化したα+16Oクラスター構造に基づくパリティ反転二重項状態として認識されてきた。そのような、クラスターが空間に局在化した描像と、それとはまったく異なるクラスターの独立粒子描像の両者を同時に含む模型波動関数を導入し、その負パリティ状態を議論した。その結果、従来のクラスター局在描像は正しくなく、実際にはクラスターの平均場構造が成り立っているという画期的発見をした。 3. 昨年度に引き続き、星の中での12C生成反応である熱的3α融合反応について、低温領域(10^7K程度)での反応率を、3体の境界条件を必要としない、虚時間発展法に基づく新たなアプローチで調べた。最近、連続状態を離散化した結合チャンネル法(CDCC)により、従来考えられてきた理論の反応確率を25桁以上上回る反応率の研究結果が最近報告されているが、我々のアプローチによる計算ではそのような反応率の増大は見られず、従来の理論データにほぼ一致する結果を得ている。更にクーロン障壁を透過するトンネル現象が支配的な低温領域において、結合チャンネル法で精密解を得るのは困難であり、収束した解を得るには500MeV程度までの励起エネルギーの連続状態を取り入れる必要があることを示した。
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