研究課題/領域番号 |
23740169
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 重貴 東京大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00451625)
|
キーワード | 暗黒物質 / ILC / LHC / 新物理模型 |
研究概要 |
本年度はLHC加速器実験においてヒッグスが発見され、その性質が多岐にわたり報告された重要な年度であった。また同時に同実験における新物理探査の結果も報告された。こちらは、これまでのところ新物理シグナルの兆候なしと報告された。これらの実験結果は本研究課題においても重要な影響を与える。暗黒物質及びその背後にある新物理模型の可能性は、LHC実験以前は広範囲にわたり様々な可能性が議論されたが、上述の結果、かなり絞り込まれつつある。今年度における私の研究実績は、LHC実験を踏まえた上で、どの様な素粒子標準模型を超える新物理模型が妥当かを徹底的に調べ、またその結果どの様暗黒物質像が得られるのかに焦点を当て研究を行い、そしてILC実験においてどのようなシグナルが期待されるのかについての下準備を完成させたことである。 具体的な研究実績は以下のとおりである。LHC実験で発見されたヒッグス粒子は素粒子標準模型の予言するヒッグス粒子と非常に良く一致しており、またその質量は約126GeVと軽めであった。この事から、その背後にある新物理模型は超対称性模型が妥当であると考えられる。一方ヒッグス粒子が126GeVと超対称理論が予言するヒッグス粒子にしては少し重めなこと、またLHC実験で新物理シグナルが見えていないことを鑑みると超対称粒子のスケールとしてはやや重め(約100TeV程度)であると考えられる。以上の事を踏まえ新物理模型(Pure Gravity Mediation ModelとQuark-Lepton Spread Gauge Mediation Model)を構築し、LHC実験や暗黒物質観測からの制限を明らかにし、また近い将来これらの実験・観測で探査できるパラメータ領域を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題における研究目的の達成度は、非常に(より正確に言うと当初の計画よりやや進んで)順調に進展していると言える。最も大きな理由は、これまでLHC加速器実験で得られた様々な結果が、幸運にも当初の研究計画の想定範囲内にあったためである。また同時に、ヒッグス粒子の質量が約126GeVと軽く、一方超対称模型の観点からはやや重めであることが次第に明らかになり、素粒子標準模型を超える物理(新物理)のスケールが比較的高いスケールにある可能性が増してきた。このことは、研究計画にある模型に依存しない手法を用いた解析が非常に有効であることを示しており、本研究課題の研究計画と非常に相性が良かったためである。 また本研究課題における研究成果も様々な機会を捉え、国内のみならず国外でも広く発表して行くことも重要な研究目的の一つである。この観点からも、本年度は非常に成功したと言える。本年度はヒッグス粒子が発見されたこともあり、国内及び国外共にさまざまな会議・研究会が開催され活発な議論が行われた。これらの機会を捉え、本研究似ていられた研究成果を広く発表することが出来た。また幸いにも、いくつかの会議・研究会にて招待講演をすることもでき、多くの聴衆の前で研究成果を披露することもできた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成12年度(前年度)において、LHC実験の結果を踏まえた上での模型構築(Pure Gravitation Mediation ModelとQuark-Lepton Spread Gauge Mediation Model)を行い、LHC加速器実験や暗黒物質の直接及び間接検出観測によるシグナルを中心とした現象論を展開し現在における制限や近い将来で探査可能性について調べた。これらの結果を踏まえ平成13年度(今年度)では、本研究課題の主目的であるILC加速器実験でのシグナルについて研究を行う予定である。特に上述の各模型の予言する暗黒物質候補の焦点を当て、どのような反応プロセスに注目すると効果的に模型の検証や暗黒物質探査の進展につながるのかを明らかにする予定である。 まだ前年度及び全前年度と同様に研究成果を国内外で開催される会議・研究会で広く公表したいと考えている。特にILC加速器実験を主題とした大きな会議・研究会(例えば今年5月末に開催予定のECFA2013国際会議等)が今年度開催される予定であり、これらに積極的に参加し研究成果の発表を行う予定である。また同時に、現在私が所属しているカブリ数物連携宇宙研究機構でもILC加速器実験をはじめとする将来加速器実験に関する研究会を自ら企画し、そこでも研究成果の発表を行いたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|