研究課題/領域番号 |
23740171
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 治 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (90532680)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 重力波 / DAQ / データ解析 / 制御 |
研究概要 |
本研究の目的は、2010年度に建設が決定された日本の大型重力波検出器計画KAGRAのプロトタイプである、100m干渉計CLIOにおいて、重力波信号のデータ取得及び観測システムを構築することにより、CLIOにおける重力波の長期観測体制を整備することである。2010年度までに、米国LIGOグループとの国際共同開発によって整備してきた上記デジタルシステムが、プロトタイプ干渉計CLIOに導入され、デジタル制御を使った干渉計の動作が確認された。 本年度はデジタルシステムを使ったCLIOでの重力波観測体制の整備を行った。まずこれまで単体で動いていたリアルタイムシステムを複数化し、それぞれのシステム間の同期(タイミング)をとることに成功した。時刻の基準はGPSアンテナを通して得ることになるが、その基準を各ADCやDACを含む計算機に配分するためのタイミングシステムを米国LIGOグループと共同で開発した。具体的にはADCやDACには1PPS(pulse per second)シグナルを、計算機にはネットワーク標準時(NTP)を併用した絶対時間を配分するようなシステムを構築した。取得したデータには、取得場所に関わらず正確な時刻がスタンプされ、複数箇所のリアルタイムシステムで取ったデータの時刻同期が実現されている。 さらに、重力波データのフォーマットを標準化した。フレームと呼ばれる単位のデータの中に、上記の時間情報、チャンネル名、ビット精度などをきちんと入れることで、後々の重力波検出のためのデータ解析に耐えうる、そしてKAGRAでのデータ解析の際、世界の重力波干渉計とのデータの互換性を保つようなフォーマットそろえた。その後のCLIOの実測データを用いたリアルタイムデータ解析システム(簡易モニタ群)などためのソフトウェア面での構築を開始し、一部ソフトに付いては動作確認を完了している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の特色の一つは、大型重力波検出器LCGTのプロトタイプである岐阜県神岡鉱山内にある低温干渉計型重力波検出器CLIOを利用することである。CLIOの感度は鏡冷却後に常温熱雑音を超えた感度を実現しており、将来計画であるLCGTで実現される高感度な状況下でのデジタルシステムのテスト環境としては最適である。現在CLIO坑内でのデータ取得をする準備を坑外実験施設において進めているところで、データの同期に必要なタイミングシステムの構築は完了し、複数台の計算機の同期を確認できた。また、実際のデータ解析のためのプラットフォーム及びデータフォーマットの生成まで順調に進んでいて、CLIOに導入する準備はほぼ完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
リアルタイムデータ解析システムのためのソフトウェア群を開発する。CLIOを用いて観測体制のテストを行う。また、デジタルシステムから出てきたデータを、検出器サイトでのリアルタイムキャリブレーション、リアルタイムデータ解析できるためのソフトウェアを構築する。ここには重力波検出アラートシステム、地面振動等の各種付随データのためのリアルタイムモニターシステム等も含む。リアルタイムデータ解析の後、オフラインデータ解析にデータを渡すまでのシステムの構築を、小規模ではあるがCLIOにおいて実現することを範囲とし、これらをKAGRAに拡張、適用可能な形で開発する。ここで構築されたソフト、ハード等の技術は、2014年から始まるKAGRA初期観測に適用、運用される。
|
次年度の研究費の使用計画 |
データ取得のためのネットワークシステムの拡充、重力はデータ及びその他環境データの保存のためのストレージの購入等、初期KAGRAでの実際の観測に耐えうるようなシステムの基礎テストのための環境を構築することを計画している。
|