研究課題/領域番号 |
23740171
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 治 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (90532680)
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キーワード | 重力波天文学 / 重力波検出 / リアルタイム制御 / 干渉計 / データ解析 |
研究概要 |
KAGRAでは計算機を用いて干渉計を制御するため、制御のための信号がそのまま重力波のデータ信号となる。このようなシステムを構築するためのテストの一環として、CLIOにおいて、シンプルではあるが2010年度までに、米国LIGOグループとの国際共同開発によって整備してきた同様のデジタル制御システムを使い、干渉計の一部自由度を計算機を使い直接制御し、同時にそこから得られたフレームデータを取得するような、一連のデータパイプラインを構築した。 昨年度までの、デジタルシステムを使った重力波データフォーマットの標準化や、リアルタイムデータ解析システムの構築等の、CLIOでの重力波観測体制の整備に引き続き、本年度はこれらシステムを利用して一週間程度の試験観測を行い、取得したデータをもとに重力波信号へとキャリブレーションをして常時モニタするようなシステムを構築した。 これら基礎技術は、KAGRAでのより高度な観測体制へとつながる第一歩となり、これ以降もCLIOでのシステムの充実させることで、KAGRAでの重力波の直接観測を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の特色の一つは、大型重力波検出器LCGTのプロトタイプである岐阜県神岡鉱山内にある低温干渉計型重力波検出器CLIOを利用することである。CLIOの感度は鏡冷却後に常温熱雑音を超えた感度を実現しており、将来計画であるKAGRAで実現される高感度な状況下でのデジタルシステムのテスト環境としては最適である。現在CLIO坑内でのデータ取得をする準備を坑外実験施設において進めているところで、データ解析のためのプラットフォーム及びデータフォーマットの生成まで順調に進んだ。また、これらシステムを利用して、短期間ではあるが、観測体制を敷くことができ、これ以降の解析アプリケーションの開発プラットフォームとしての役目を十分果たすことができることが確認された。更に将来的に渡り、これらシステムをもとにKAGRA実機での観測環境を構築していくための足がかりとなるということが確認できたから。
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今後の研究の推進方策 |
今回行った観測体制は、KAGRAでの最終的な重力波検出のための観測の第一歩である。解析結果も坑内の一部の計算機から見ることができる単体のアプリケーションに相当し、これらソフトウエアを拡張し、解析ソフトサーバーに相当する部分の早期構築を目指す。この上で動くようなアプリケーションの開発がこれからの課題である。ハードウェア面では、CLIO坑外に昨年度新しく建設された研究棟からのリモートコントロールを目指す。これは、KAGRAを坑外からリモートで制御する技術へとつながる。
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次年度の研究費の使用計画 |
19インチラックを購入し、坑外の研究棟に一部計算機を整備することにより、リモートで坑内のCLIOをコントロールする体制を整えることを計画している。
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