本研究は昨年度からの繰り越しで、今年度が最終年度となる。今年度は特に、前年度までに開発した神岡坑内のCLIOにおけるデジタルシステムを利用したデータ取得及び解析手法を、坑外の別棟のリモートコントロールルーム内から操作できるようなシステムを組み上げた。本デジタルシステムの稼働にともない、リモート制御で必要なADCやDACの時刻同期や重力波データの低遅延転送に関しても、将来システムが大型化された際の汎用性に関する知見を得る等、プロトタイプとしては十分な成果を得ることができた。特に、干渉計の要素雑音を評価するための標準的なソフトを動かすプラットフォームとして十分使用できることを示すなど、目的の一つとして掲げていた世界標準の技術を使用する見通しがついたことも成果の一つとして上げることができる。また、本研究で組み上げたシステムで測定した環境データをもとに、将来干渉計データと比較するためのハードウェア、ソフトウェアの準備等もはじまっている。 計算機を用いた本研究の成果は、別システムへの適用が非常に楽なため、現在同神岡坑内に建築中の3kmの大型低温干渉計KAGRAのデータ取得及び解析システムの一部にそのまま流用でき、また今年度の成果のリモートによる操作手法はKAGRAの初期観測時にそのまま適用できるなど、当初のKAGRAへの応用と言う目的はほぼ達成できたと言え、将来の大型干渉計での重力波データ取得時に、冗長性も含めた安定な観測体制を敷くことに直結できると考えている。
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