研究課題/領域番号 |
23740172
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 基 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70568170)
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キーワード | 素粒子論 |
研究概要 |
平成24年度、スイスのCERN研究所において行われているLHC実験においてヒッグス粒子が発見された。この発見は本研究課題の枠組みである超対称標準模型に対してとても大きなインパクトがあった。LHC実験において測定されたヒッグス粒子の質量を説明するためには、超対称標準模型が特別な構造を持たなければいけないことことがわかる。一方で、素粒子標準理論を越える物理のシグナルが、これまでにミュー粒子異常磁気能率の測定から見つかっている。平成24年度は、測定されたヒッグス粒子の質量とミュー粒子異常磁気能率の実験結果を説明する超対称標準模型を構築し、その現象論的性質を調べた。特に、近い将来、LHC実験においてそのような模型が検証可能であることを明らかにした。この研究結果により、更に高いエネルギースケールにあると考えられる宇宙再加熱過程に制限を与えることができる。 また、宇宙再加熱過程は一般的にグラビトン粒子の超対称パートナーであるグラビティーノ粒子の生成を伴う。具体的な生成過程には、グラビティーノ粒子が熱プラズマから生成される過程と、宇宙再加熱を引き起こすスカラー粒子の崩壊において直接生成される過程がある。後者の過程では、これまで限られた状況においてのみグラビティーノ生成量の見積りが可能であった。平成24年度は、一般的な状況において適用可能な公式を導いた。この研究結果は、宇宙再加熱過程の詳細を明らかにするために重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LHC実験においてヒッグス粒子が発見されたことによる超対称標準模型へのインパクトが大きかったため、研究はこれまでとは異なる段階に入った。軽いグラビティーノを実現するための現実的な模型の構築を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続き研究を遂行する。ヒッグス粒子はもとより、ミュー粒子異常磁気能率から示唆されている素粒子標準理論を越える物理のシグナルに注目して模型を構築し、その現象論的性質を調べる。また、将来の実験における模型の検証可能性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外の会議・研究会へ積極的に参加する。また、成果発表や出張中における研究を円滑に行うための機器を購入する。
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